税関から貨物をとめられた!(通関トラブルあれこれ)~輸入編①「申告外物品、知的財産権」~

マルハナジャーナル!

税関から貨物をとめられた!
(通関トラブルあれこれ)
~輸入編①「申告外物品、知的財産権」~

みなさんこんにちは!

みなさんは、輸出入通関でのトラブルに遭ったことはありますでしょうか?

海外の取引先との交渉も順調に進み、貨物が日本に到着。

税関に輸入申告を行って、貨物の運送手配も済ませていたのに・・・通関業者から、「税関から通関(貨物)をとめられました!」との連絡が・・・どうして???

通関をとめられるのには、どのようなケースがあるのでしょうか?

輸出入通関でのトラブルとその対処方法について、数回に分けてご紹介したいと思います。

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申告外物品、知的財産権関係でのトラブル

申告外物品

輸入申告を行って税関検査が実施されると、まれにンボイス(仕入書)に記載がない貨物(「申告外物品」といいます。)が発見されることがあります。

よくあるのは、サンプル品や商品の予備品等が輸入貨物に混入しているケースや、輸出者の好意で輸入者への贈答品(例えば翌年のカレンダー等)が入れられているケースです。

また、輸出地でのバンニングの際に、作業員が工具等をコンテナ内に置き忘れていた、なんていうこともあります。これもりっぱな申告外物品となってしまいます。

このような場合は、税関に申告外物品が入れられていた経緯等を説明し、追加申告すれば通関を認められることが多いですが、他法令の許可・承認を要するような貨物である場合には、廃棄せざるを得ないこともあります。

※ 「他法令」とは、関税関係以外の法令で、輸出又は輸入に関して許可承認等を定めたものをいいます。

でも、安易に考えてはいけません。申告外物品は“無申告の貨物”になります。

税関は、申告外物品が発見されると、関税法第111条の「無許可輸入罪」(関税有税品の場合は同第110条の「関税ほ脱罪」)も視野に入れて対応を検討します。

まあ、よほどの物でない限りそこまでには至らないとは思いますが、場合によっては、ほかにも申告外物品がないか、貨物全量について点検するように求められることもあるんです。

そうなると時間と労力は相当なもので、作業料も高くついてしまいます・・・

輸入者から輸出者に、「インボイスにないものはコンテナに入れないように」また、「インボイスには予備品等も含めてすべて記載するように」とご注意していただければ、と思います。

申告外物品で一番まずいのは、関税法第69条の11で規定する「輸入してはならない貨物」が発見された場合です。

もうこうなると、通関業者としてはお手上げです・・・麻薬や覚せい剤、けん銃等の“社会悪物品”が発見されると、輸入者は逮捕されてしまいますしね。

※ 「輸入してはならない貨物」は、以前は関税定率法第21条で規定され、“輸入禁制品”と言われていました。

(参考)2001輸入してはならない貨物とは (カスタムスアンサー) : 税関 Japan Customs

知的財産侵害物品

知的財産を侵害する物品(「知的財産侵害物品」といいます。)も、関税法で規定する“輸入してはならないもの”の一つです。

知的財産とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権等のことですが、これらの権利者から税関長に対して、

「自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、当該貨物の輸入を差し止め、認定手続を行ってください」

という“輸入差止申立て書”が提出されていると、輸入申告された貨物がこれらの貨物に該当するかどうか、まず、貨物検査(確認)が行われます。

※ 輸入差止申立て書が税関に提出されていない場合であっても、税関が“職権”で貨物を止めることもあります。

税関は、知的財産侵害物品に該当すると思われる貨物(“侵害疑義物品”と言います。)を発見した場合、その侵害疑義物品について、侵害物品に該当するか否かを認定するための「認定手続」を開始します。

(参考)認定手続の流れ : 知的財産ホームページ (customs.go.jp)

税関HPより

なお、知的財産侵害物品を繰り返し不正に輸入するなど、悪質な場合には、認定手続によることなく、犯則調査に移行することもあります。

※ 知的財産侵害物品を輸入した者若しくは輸入しようとした者は、関税法第109条の規定(10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し又はこれを併科)により、処罰されることがあります。

認定手続が開始されたら・・・

税関から、輸入者及び権利者に対して認定手続を開始する旨が通知されるとともに、これに併せて、輸入者及び権利者双方にそれぞれの名称又は氏名及び住所が通知されます(「認定手続開始通知書」)。

侵害物品に該当しなければ輸入できます・・・ですが、税関は、侵害疑義物品の判断は慎重にするので、認定手続が開始されるものは、ほぼ間違いなく“侵害物品”と思ってよいでしょう。

「じゃあ、輸出国に積み戻す」と言ってもダメです。

知的財産侵害物品は、“輸出してはならない貨物”にも該当し、輸出貿易管理令の規定に基づく承認を得る必要あり、実質的に輸出(積戻し)ができないからです。

認定手続が開始された場合には、ほとんどの場合、(多分、お金を払って)権利者から “承諾”を得るか、任意放棄(所有権の放棄)、侵害の疑いのある部分の切除、廃棄等の自発的処理を行うことになります。

自発的処理をせずに侵害物品に認定された場合には、税関から“没収”されます。

なお、納得がいかずに“争う意思”がある場合には、「認定手続開始(輸入者等意思確認)通知書」の通知を受けた日から起算して10執務日以内にその旨を書面で税関に提出します。

ただ、ほとんど勝ち目はないとは思いますが・・・。

商標権(ブランド)についてはわかりやすいですし、輸入者の皆様も気をつけておられるので大丈夫と思います。
著作権については、有名なキャラクターに“似ている”として止められることがあります。
意匠権については、“椅子”や“プリンターカートリッジ”、“ゴミ箱”、 “イヤホン”、“スマホ充電器”、“トレーニング器具”などの差止め事例が多いようです。

輸入してから気が付いた、では大変なことになりますので、輸入取引を開始する前に、知的財産についても十分ご確認ください。     

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。

日新運輸工業・国際部には、輸出入申告のプロである通関士がたくさん在籍しております。

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