更正(還付)の請求 / 不服申し立て(再調査の請求、審査請求) ~払いすぎた関税等を還付してもらう手続きについて~

マルハナジャーナル!

更正(還付)の請求 / 不服申し立て(再調査の請求、審査請求) ~払いすぎた関税等を還付してもらう手続きについて~

みなさん、こんにちは!

外国から貨物を輸入する際には、税関に輸入申告(「納税申告」も兼ねています。以下「申告」といいます。)を行い、関税・消費税等を納税し、輸入許可後に貨物を引き取ることができます。

輸入申告書には、関税法等の法律に基づいて数量、価格、税番、税率と税額を記載しますが、ときには通関書類のミスや計算誤りなどで税額を誤って税関に申告してしまうケースも発生します。

今回は、誤って本来納付すべき税額よりも多い(過大)税額で税関に申告してしまったケースや、過大に納税した関税や消費税等を還付してもらう制度、手続について解説したします。

・今回の解説は、納付すべき税額又は当該税額がないことが納税義務者(輸入者)のする申告により確定する「申告納税方式」により、誤って過大に申告したケースについてです。

※ 入国者が携帯して輸入する貨物や課税価格が20万円以下の郵便物などについては、「賦課課税方式」(納付すべき税額が専ら税関長の処分により確定する方式です)が適用されます。当初の賦課決定が過大であった場合には、税関長による再賦課決定が行われます。

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なぜ過大な申告をしてしまうの?

関税・消費税を過大に申告してしまうのは、次のような原因があげられます

輸出者が作成したインボイス(仕入書)の品名(品番)や金額に誤りがあった

例)記載する商品番号を間違えて単価$5のものを$10と記載し、合計金額も間違っていた。また、決済通貨をCNY(中国元)とすべきところを、間違えてUSD(米ドル)で記載した。

⇒ 2024年2月11日の週に適用される円換算レートを例に見ると、
1CNY(中国元)=20.52円
1USD(米国$)=147.24円
で、適用通貨CNYをUSDに間違えると、輸入申告価格は約7倍も高く(過大)になってしまい、誤った申告価格に基づいて計算される税額も過大になります。

税番を決めるための商品説明書類が誤っていた

例)商品番号5を輸入したが、間違った商品番号6の商品説明書の材質、成分により誤って品目分類を行い、申告税番・税率を決定した(関税率5%のものを、間違えて関税率10%の税番を適用するなど)。

⇒ 商品説明内容が間違っていると、品目分類を誤り、高い税率で申告するおそれがあります。

※ 税番が異なっても関税率が同じ場合もあります。この場合には、納税額は変わりません。
※ 品目分類は大変難しいものです。詳しくは、弊社マルハナジャーナル「HSコードってなに?」でも解説しています。

NACCSで輸入申告書を作成する際に入力ミスをした

例)通関書類の通貨がCNYであるのに間違えてUSDで入力した。また、決済金額がUSD1,000であるのに、桁を間違えてUSD10,000ドルで入力した。

⇒ 数字を一桁間違えると、思わぬ高額の申告価格になってしまいます。

※ 税関への申告は、(輸出入ともに)ほぼ全て貿易関連の行政手続と民間業務をオンラインで行うシステム(「NACCS」、ナックスといいます)を使用して行われています。

申告を輸入者自身(個人通関又は自社通関)で行う場合だけでなく、輸入通関を通関業者に依頼して行う場合にも、商品内容を誤って通関業者に伝えた場合や通関業者が計算ミスをするなど、同様の申告誤りが発生します。

通関業者に通関依頼した場合においても、申告は納税義務者である輸入者の名義で行います。通関業者はその代理人として税関に申告していますので、申告誤りが輸入者に起因するものであっても通関業者に起因するものであっても、その後の(更正の請求などの)手続も輸入者の名義で行うことに変わりはありません。

輸入許可(納税)前に納税額の申告誤りが判明した場合

では、申告誤りが判明した場合の対応について、輸入許可前と許可後に分けて説明したします。

NACCSで申告を行うと、
「区分1(即時許可)、区分2(審査扱い)、区分3(検査扱い)」
の3つに審査区分が分かれます。

審査区分1の場合には、申告と同時に(関税等納付後)自動的に輸入が許可されます。

審査区分2又は3の場合には、税関の審査又は検査が終了し、税関がNACCSで「審査終了」の業務をしなければ、(関税等納付)輸入許可がされないようになっています。

ですので、区分2又は3となり、税関に書類を提出する段階で通関業者自ら誤りに気付き、あるいは書類提出後に税関の審査で誤りが判明した場合には、関税等を納付するまで(輸入許可まで)の間に正しい申告価格、税番・税額に訂正し、税関の確認を受ければ無事、輸入許可されます。

※ 審査区分については、弊社“マルハナジャーナル”の「審査区分ってなに?」で解説しています。

幸いなことに輸入許可(関税等納付)前に誤りに気づき、「正しい税額」を納付した場合には、更正(還付)の請求は発生しません

ただし、今回は正しい税額で納税したけど、過去の通関分の関税等が払い過ぎていたという場合、過去分について還付してもらうためには、後述する「輸入許可後に納税額の申告誤りが判明した場合」と同様に、更正の請求の手続が必要となります。

関税等を過大に納付したときの対処は?

前置きが長くなって申し訳ございません。ここからが今回の本題です。

輸入許可後に納税額の申告誤りが判明した場合

区分1で即時許可となってしまったケースです。

関税等の納付額に誤りがあったまま輸入が許可されると、後の処理がとても大変です!

まず、関税等を多く払い過ぎていたことに気が付いたら、すぐに税関(通関を行った官署)に連絡(一報)します。通関業者に申告を依頼している場合には、通関業者を通じて連絡します。

その上で、関係書類等を揃えて税関に事情説明に行き、更正の請求をすることについて相談をします。

税関から更正の請求を行うことを認めてもらえば、「更正の請求書」に“関係書類”を添付して提出し、更正の請求書の審査が終了すると過大に支払った関税等が還付されます。(還付されるまでには少し時間がかかります。)

ここで重要となる「関係書類」について、説明いたします。

更正の請求をするためには、納税義務者が「誤った申告により本来の(正しい)納税額をよりも過大に支払ったこと」について、立証しなければならないのです。

「関係書類」は、その立証のための書類となります

更正の請求における立証責任について

税関HPに掲載されている関税等不服審査会の答申(令和元年6月20日付答申第111号)を見ると、立証責任と更正の請求を行う際の提出書類等について、次のように記載されています

 「関税法では、納付すべき税額が納税義務者のする申告により確定することを原則とする申告納税方式を採用しており(法第6条の2第1項第1号)、申告納税方式が適用される貨物を輸入しようとする者は、税関長に対し、当該貨物に係る関税の納付に関する申告をしなければならない(法第7条第1項)。

また、法第7条の15 第1項は、納税申告をした者は、その申告内容に過誤があることを理由に更正の請求をなし得るとし、関税法施行令第4条の17 第1項は、請求者において更正請求書に、その請求前の当該貨物の所属区分、課税標準、税率及び税額、当該更正の請求に係る更正後の当該貨物の所属区分、課税標準、税率及び税額、当該更正の請求をする理由、その他参考となるべき事項等を記載すべきものとし、同条第2項において、当該更正の請求をする理由の基礎となる事実を証明する書類があるときは、当該書類を添付するものとし、請求者において、その過誤の存在を明らかにすることを要求している。」
(税関HPから引用)

過誤の存在を明らかにする方法(立証)とは?

税関に限らず、一般的に国の行政機関は、いったん国庫に入った税金を還付することについては、厳しい審査をします。当然、「はい、そうですか」と言ってすぐには返してくれません。

前述した通貨適用誤りや計算誤りについては、輸入した貨物の性状等などとは関係のない明らかなヒューマンエラーですので、インボイスや契約書によって“過誤の存在を明らかにする”ことは、比較的容易であるといえます。

一方で、税番・税率の適用誤り(品目分類誤り)については、「立証」が非常に困難です。
なぜかというと、関税法第4条において、
 「関税を課する場合の基礎となる貨物の性質及び数量は、当該貨物の輸入申告の時における現況による
と規定されているからです。

輸入許可後に、まだ貨物を保税蔵置場に保管したままの状態であり、税関から貨物の現物を確認してもらうことが可能であれば、輸入の許可を受けた貨物の税番が間違っていたことを立証することができます。

しかし、輸入の許可後に貨物を国内に引き取ってしまったあと(現物がない状況)では、輸入申告時点における貨物の性質等を書類によって立証することは非常に難しいことなのです。

通関書類、契約書、貨物の写真、商品説明書などの関係書類や、輸入者が輸入許可後に国内に引き取った貨物(商品)をサンプルとして税関に提示しても、
 「輸入申告時点における貨物の性状等が、(立証のために提出された)関係書類と全く同一のものであるという事実が確認できない。」
とされ、更正の請求が認められないケースもあります。

わかりやすくいうと、「輸入申告した貨物は、本当にこの書類にある貨物だったのですか?間違いなくこの貨物であったということを証明してください。」ということなのです。

通常はここであきらめてしまいます・・・

でも、「納得できない!払い過ぎた税金は何とか取り戻したい!」という場合には、以降の手続を行うしか手段はありません。

「更正請求書」を税関に提出する

税関に相談した結果、更正の請求を認めてもらえなくても、関税法第7条の15に基づいて「更正請求書」を提出することはできます

税関は、更正請求書が提出された場合、書類の形式上の不備がなければ受理しなくてはなりません。理由なく不受理とすることはできません。更正を行うか又は「更正すべき理由がない」ことを更正の請求を行った者に通知しなければなりません

なお、前述のとおり、更正請求書の提出者は「輸入者(納税義務者)」となります。

通関業者に通関を依頼している場合、たとえ通関業者に起因するミスで税金を過大に納付した場合でも、「間違えたのは通関業者なのだから、通関業者名義で更正請求書を提出しなさい」と言っても、それはできません。

通関業者は、輸入者の代理人として更正請求書を税関に提出します

不服申し立て

更正請求書の提出後、結局、税関から「更正すべき理由がない」との通知を受けた場合、そこで断念するか、または税関の処分に対して不服申し立てを行うことになります。

不服申し立てには次の2つの制度があり、いずれかにより行うことができます。

※ 再調査の請求を行った後に審査請求を行うこともできますし、再調査の請求をせずに、最初から「審査請求」を行うこともできます。なお、通関業者は、輸入者の代理人として不服申し立ての手続を行うことができます。

再調査の請求(関税法第89条)

再調査の請求は、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に税関長に再調査の請求書を提出することにより行います。再調査の請求書の提出を受けた税関長は、その処分が正しかったかどうかを調査し、その結果を決定書謄本で請求した人に通知します。

(参考)再調査の請求は、以前は「異議申立て」といい、処分の通知を受けた日の翌日から2か月以内に「異議申立書」を提出することとなっていましたが、平成28年の関税法改正で不服申し立て制度が変わり、「再調査の請求」になりました。 

審査請求(関税法第91条)

関税法その他の関税に関する法律の規定による税関長の処分について不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に財務大臣に対して不服を申し立てることもできます。

再調査の請求についての決定があった場合において、当該決定を経た後の処分になお不服があるときは、当該再調査の請求をした人は、決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1か月以内に財務大臣に対して不服を申し立てることができます。これらを「審査請求」といいます。

(参考)審査請求され、関税等不服審査会において答申されたものが税関HPに掲載されていますので、関心のある方はご覧ください。 ⇒ 関税等不服審査会(答申報告等)

裁判(不服申し立ての制度ではありません)

財務大臣の判断になお不服がある場合には、裁判所に訴えを提起することができます。この訴えの期限は、原則として裁決書謄本の送達を受けた日から起算して6か月以内です。

※ 関税の確定若しくは徴収に関する処分に関しては、原則として、審査請求の裁決が行われた後でなければ、裁判所に訴えを提起することはできません。

参考(違約品等の再輸出又は廃棄の場合の戻し税)

輸入許可後に、輸入した貨物が契約した商品と型番・形状等が異なっていた(違約品)という場合には、今回説明した「更正の請求」ではなく、関税定率法第20条「違約品等の再輸出又は廃棄の場合の戻し税」の規定を適用することなります 

※ 詳しくは、弊社マルハナジャーナル
税関から貨物をとめられた!(通関トラブルあれこれ)~ 輸入編③:「違約品」 (関税払い戻し制度)~」 
において解説しています。

まとめ

申告が過少であった場合に行う修正申告は、「納税者自らの判断と責任において行うもの」であるのに対し、申告が過大であった場合に行う更正の請求においては、「自ら計上記載した申告書をいったん提出した以上、その申告書に記載された事項が事実に反するものであるとの立証責任は、更正の請求をする者にあると解される。」とされています。

間違って多く税金を払ってしまった場合は、過払い分を還付してもらうのは(立証が)大変です。

最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

日新運輸工業・国際部には、輸出入申告のプロである通関士がたくさん在籍しております。

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