2023年上半期、日本の食品輸出額は過去最高を記録しました。海外における日本の食品の認知や人気は、高まり続けていると言っても過言ではありません。
しかし、輸出したい食品がありつつも、求められる手続きが多すぎて実行に移せない人もいるのではないでしょうか。
この記事では、食品輸出で絶対に知っておくべき許可と申請方法、よくある輸出規制、遵守すべき規格について紹介します。食品輸出の手続きを難しいと感じる人は、ぜひ参考にしてください。
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食品輸出で許可が必要なものと具体的な手続き
大前提として、食品を輸出するにあたり、品目や国によってさまざまな許可が必要です。それらをしっかりと把握して、制度を遵守しなくてはなりません。
一方で、おおよその食品に共通する許可や手続きもあります。たとえば植物や畜産物を輸出するなら、検疫を求められる可能性が非常に高いです。
まずは植物と畜産物、水産物、加工食品と大きな枠組みに分類し、代表的な許可と手続きについてお伝えします。
植物
野菜や果物、米など植物性の食品を輸出するなら、植物検疫への理解は欠かせません。
植物につく病気や虫が国境を越えて侵入し、拡散することを防ぐため、日本国内の植物防疫所による輸出検査が行われます。検査に合格すると、植物検疫証明書が発行されるという流れです。
輸出先や輸出品目によっては、植物検疫証明書の添付が必須だったり、免除されていたりします。また、病害虫の発生状況によっては、輸入許可証の事前取得が必要になったり、栽培地の検査が求められることもあるのです。
このように、植物検疫の具体的な手続きは、個々のケースによって差があります。まずは日本政府が発信している情報を、下記サイトからチェックしてみてください。
輸出検疫の申し込みは、植物防疫所窓口での書面申請が一般的です。一部の手続きにおいては、オンラインも可能となっています。
畜産物
畜産物を輸出する際は、動物検疫所による輸出検査が必要になると認識してください。食肉だけでなく、ハムやソーセージなどの肉製品も検査の対象です。
指定検疫物とされる病原菌は、家畜伝染病を他国へ拡散する恐れがあります。したがって政府機関による検査に合格した証として、輸出検疫証明書が求められるのです。また、監視伝染病とされる病原体の検査が必要になるケースもあります。
指定検疫物や監視伝染病の対象となる品目は、こちらをご覧ください。
動物検疫所の検査は、家畜の伝染性のための証明に過ぎません。さらに、輸出先の国が認定した施設での処理を求められ、衛生証明書を添付する品目もあります。
輸出したい品目と、輸出先に目星がついたなら、動物検疫所に相談するのも一案です。管轄の検疫所は、輸出時に利用する港から探せます。
水産物
水産物の輸出で代表的な手続きは、輸出先から認定を受けた施設にて、加工や保管をすることです。また、衛生証明書の添付が求められる傾向にあります。
さらに、まぐろの輸出には漁獲証明書、アワビやウナギの稚魚には適法漁獲等証明書など、品目により必要な書類が追加される点も注意が必要です。これらは、水産資源保護のための国際的なルールに基づいています。
品目別や輸出先ごとの手続きや必要書類は、下記のサイトを参考にしてください。
加工食品
加工食品の原料が食肉由来であれば、動物検疫所による輸出検査の対象です。さらに原料が輸入された肉なら、原産国によって発行された輸出衛生証明書も求められます。
植物由来の原料の場合は、輸出検査は植物検疫所の管轄です。また、輸出先の衛生関連の規制や、食品添加物の規則も確認してください。
食品添加物の注意点については、のちの見出しにて詳しくお伝えします。
代表的な食品に関する輸出規制
生鮮食品の輸出規制は多くの国で実施されており、規制解除されるまで輸出できません。とくに畜産物は対象となる国や地域の範囲が広く、長期化する傾向にあります。
また、放射能による輸出規制は、他品目で実施されていましたが、欧米を筆頭にほとんどの国で撤廃されました。しかし同時期の中国では、水産物の輸出が急遽全面停止になっています。
このように、食品の輸出規制は刻々と変化するため、情報収集を怠らないでください。この見出しでは、代表的な輸出規制をピックアップしながら、最新の情報を調べる方法も紹介します。
畜産物の輸出規制
家畜の伝染病が自国へ侵入するのを防ぐため、どの国家も厳しい規制を敷いています。伝染病が発生した国からは、ただちに輸入を停止することも珍しくありません。
一例を挙げると、日本国内で鳥インフルエンザの疑似患畜が発見され、鶏肉と鶏由来の食品輸出が規制されました。2023年8月末の時点では、輸出検疫証明書の交付が一時停止しています。豚やイノシシ由来の食品も同様に、豚コレラの発生が原因で、輸出検疫証明書が交付されていません。
とはいえ、輸出の解禁も十分に期待できます。実際に、鳥インフルエンザの清浄が香港に認められ、輸出再開の合意が得られました。香港向けの輸出検疫証明書は、2023年5月より発行されています。
日本産の畜産物が輸出できる国や、輸出できる品目については、以下のサイトを参照してください。
放射性物質による輸出規制
2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質の影響が懸念され、50以上の国と地域で輸出規制が設けられました。2023年8月の時点では、規制を撤廃した国がほとんどです。
輸出が停止された場所は、都道府県単位で指定されています。指定地域外で生産された食品は輸出可能で、原産地証明書や放射性物質検査証明書の添付が必須です。
一方で、福島第一原発の処理水が海洋に放出されたことで、新たな輸出規制が発生しました。中国政府は「日本産の水産物の輸入を全面停止する」と、2023年8月24日に宣言しています。
放射性物質による規制の詳細や、該当地域については、下記のサイトを参考にしてください。
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う食品等に係る諸外国・地域への輸出に関する証明書発行等について:農林水産省
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食品衛生・安全性に関わる規則と国際規格
昨今は、食品衛生や安全性を重視する国が増えており、政府が要求する基準も厳格になりつつあります。
海外市場における日本産の食品は、安全性の高さが好評を得ているとのことです。しかし、国によって添加物や残留農薬の基準が違うため、輸出できない食品は存在します。
また、欧米諸国のように食品検査が極めて厳しい国からは、国際規格の遵守を当然のように求められるでしょう。
食品の衛生や安全性を保証するにあたって、欠かせない規則や手続きを紹介します。
指定施設での処理・施設の認定
食品を輸出する際には、輸出先が認定した施設での加工が義務になることが予想されます。もしくは、加工する施設を輸出先に申請し、施設の認定を受けることもあるでしょう。
たとえば、日本産の精米を中国へ輸出する場合は、下記の手続きが必要になります。
- 中国に指定された工場で精米する
- 中国が認定した倉庫にて、くん蒸する
畜産物の輸出については、指定施設での屠殺や解体、加工などの処理を要求する国が多々あります。水産物の輸出は、加工をする施設や保管施設などを、輸出先向けの取扱施設として認定を受けるケースが目立ちます。
指定施設の要件は、国や地域、また輸出品によってさまざまです。以下のサイトでは、輸出先の国名をクリックすると、品目別による施設認定の手続きが記載されています。
残留農薬・食品添加物の規格基準
日本で設定されている農薬の残留基準値と、他国の基準値が一致するとは限りません。輸出をするなら、輸出先の基準値も満たすことが求められます。
食品添加物については、定義からして国によって異なる可能性すらあるのです。日本では添加物に該当しなくても、他国では添加物として扱われることがあります。また、食品添加物を使用する用途によって、基準値が変動することも珍しくありません。
まずは、日本における規格基準と、他国での扱いを比較してみてはいかがでしょう。下記のサイトでは、残留農薬や食品添加物が輸出に適しているかを、簡易的にチェックできます。
なお、残留農薬や食品添加物の規格基準は、頻繁に変更されます。たとえ政府発表による情報だとしても、最新の情報とはかぎりません。
国際的に認められている規格に沿うことで、残留農薬や食品添加物の基準をクリアできる可能性も高まります。次の見出しにて解説するので、ぜひ参考にしてください。
CODEX規格
CODEXは世界的な食品規格で、WHO(世界保健機関)によって定められました。国際取引のルールとしても扱われているため、食品を輸出するなら知っておきたい規格です。
CODEXでは、消費者の健康を保護するために、科学的なデータから安全性が評価されています。たとえば食品添加物を用いる際の基準や、残留農薬が害になりにくい量も定められているのです。
また、品質保持や公正な商取引についても、CODEXの規格があります。食品の製造方法や検査方法、貿易の手続きなども言及されていますが、遵守以前に、全容を把握することすら困難かもしれません。
CODEXの具体的な規約を知りたい方は、下記のサイトをチェックしてみてください。
HACCP規格
HACCPは食品衛生のための国際規格で、欧米をはじめ世界各国で導入されています。昨今はHACCPを義務とする国も増えているため、未対応となると輸出先は限られるでしょう。
HACCPに沿うことで、食品衛生の危害を予防できます。HACCPでは、材料を受け入れた時点から製品を出荷するまで、各工程ごとに病原菌や異物が混入する要因を分析します。そして、予防に効果的な工程を監視するという仕組みです。
輸出先や品目によっては、政府や第三者機関によるHACCP認定が必須です。認証までは必要なくても、HACCP実施を要求されることは予想されます。
日本でもHACCPによる衛生管理が制度化され、一部の業種を除き、実施が義務となりました。以下のサイトは、厚生労働省によるHACCPのガイドラインです。
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地域別・食品輸出に必要な許可
アメリカと中国へ食品を輸出する場合、あらゆる食品で確実に必要となる許可があります。輸出先の政府が指定する方式で、食品を製造した施設を登録し、許可を得なくてはなりません。
EU圏内の国へ輸出をする際は、EU圏全体の規約があり、それを遵守することが求められます。EU独自規格の一例として、混合食品と定義される食品への対応が必要になりました。
それでは、上記で述べた国家独自の許可について、地域別で深堀りしていきます。
アメリカ
アメリカならではの輸出手続きは、FDAへの登録です。FDA登録をせずに食品をアメリカへ輸送すると、通関で止められる恐れがあります。
FDAの登録手続きは、アメリカへ輸出する食品を製造する施設だけでなく、加工や保管をする施設も対象です。また、アメリカへの食品輸出は米国代理人が必要になります。
さらに、FDAだけでなく、アメリカの行政機関の許可が必須の品目もあるのです。たとえば、アルコール類ならTTB(アルコール及びタバコ税および貿易局)の規制も遵守しなくてはなりません。
アメリカ向け食品輸出の基礎知識を得たい人は、「アメリカへ食品輸出をする方法は?具体的な手続きや規制も解説」をぜひチェックしてください。
中国
中国へ輸出する際に、あらゆる食品で必須の手続きがあります。中国へ輸出する食品を製造した企業は、中国政府に向けて登録をしなくてはなりません。
この手続きでは、食品の最終製造をした施設や、加工した施設、最終貯蔵ならびに保管場所を登録します。企業が自ら中国政府へ登録する場合と、日本政府による中国政府への登録があり、品目によって分けられます。
また、中国国内で管轄となる税関に届出をすることも、知っておいてください。申請内容は、中国国内の保管場所や、食品の安全を管理する部署についてです。
中国への食品輸出で絶対おさえるべきポイントを網羅したい人は、「中国へ食品輸出する際の手続きは?規制や輸出できないものも紹介」をご参照ください。
EU諸国
EU向けの輸出手続きは、輸出する国別の規則だけでなく、EU圏内の規則も確認しなくてはなりません。さらに、基準自体が厳格なため、より困難が予想されます。
EU独自の規格として、動物性の原料と植物性原料を含む食品を、「混合食品」と定義したものがあります。それらを含む加工食品を輸出をする事業者は、混合食品への対応が必須となりました。
混合食品の規制対象は、品目というよりは、材料の性質や加工具合によって区別されます。たとえば燻製のチーズは混合食品になり得ますが、ハーブが含まれるチーズは該当しません。
下記のサイトでは、混合食品に該当するかについて、大まかな傾向を知ることができます。実情は加盟国の国境管理所へ問い合わせをして、確認してください。
食品輸出のサポートは日新運輸工業におまかせください
これまで見てきたように、食品を輸出する際の許可や申請は煩雑で、細やかな対応が求められます。さらに法令は頻繁に変更されているので、常に最新の情報を把握しなくてはなりません。
日新運輸工業は輸出業務の経験が豊富で、あらゆる輸出手続きを代行してきました。日本国内の輸送から通関手続き、輸出先での輸送手段の手配までを、ワンストップでお任せいただける体制です。
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まとめ
食品を輸出するには、数多くの許可申請が必要となります。また、国や品目によって要求される手続きは異なり、頻繁に変更される可能性もあるのです。
輸出規制についても注意が必要です。政府間の都合によって突如輸出が停止される恐れもあれば、長く続いた規制でも緩和や解禁される望みだってあります。
近ごろは食品衛生や安全性が重視されるようになり、国際規格を導入する国が増えました。遵守しないと輸出できないとはいえ、全容を把握するのですら困難だったりします。
食品輸出の許可や手続きでお困りのことがあるなら、貿易の経験が豊富な業者に相談してみてはいかがでしょう。常に最新の情報を網羅しているので、実用的なアドバイスが期待できますよ。