2011年から行われていた日本産食品に関する輸入規制(主に福島原発事故後の放射性物質関連)が2023年8月に撤廃され、ヨーロッパへの食品輸出がしやすくなってきています。和牛や抹茶など、日本の食を愛する方がヨーロッパには多く、現地のスーパーマーケットでも日本の食品を見かける機会が増えています。
しかし、EU規制は世界で最も厳しい食品規制だとも言われており、許可申請や手続きが煩雑になりやすく戸惑う方も多いです。
この記事では、ヨーロッパ向けの食品輸出の規制・規格や、輸出時に必要な手続きについて解説しています。ヨーロッパへの販路拡大を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
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ヨーロッパへ輸出する際の確認事項
日本からヨーロッパに向けて食品を輸出する際、以下の2つの制限や規制をクリアしなければなりません。
- EU規則
- 輸出先の国内法
それぞれの手続きを経て、ようやく輸出が実現します。EUにおける食品規制は厳しいため、そもそも輸出したい食品が輸出できる項目に該当するかどうかの確認も必要です。
2つの規制・制限について詳しく確認しましょう。
EU規則による規制と制限

世界で最も食品に関する規制が厳しいと言われているのがEUです。たとえば、調味料を出したい場合、含まれている成分がどこの工場で製造されているのかまでを把握しなければなりません。
このように、一次生産から加工に至るまで、EUが要求する衛生基準を満たす必要があります。品目ごとに細かいルールが定められているため、日本国内仕様では輸出不可となる可能性があります。
日本からヨーロッパに食品を輸出する場合、以下のようなEU規則を満たさなければなりません。
- 食品・添加物等の規格基準
- 混合食品規制
- 動物用医薬品規制
- 容器・包装規制
- 食品添加物規制
- トランス脂肪酸にかかる規制
また、以下の食品については、そもそも輸入することが難しい・できないとされています。
- 桃・ネクタリン
- リンゴ
- キウイフルーツ
- かんきつ類
- 日本産のハチミツを含む混合食品
- 肉の塊が入っているレトルトカレーやカップラーメン
- 日本産の乳成分が少しでも入っているもの
ちなみに、2011年3月に起きた東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、制限されていた日本産食品に関する輸入規制は段階的に緩和され、2023年8月に全廃されています。
EUの食品輸入規制撤廃を受け、福島県産品のプロモーション実施|JETRO
輸出先の国内法による規制

ヨーロッパに輸出をする場合、EU規則だけでなく輸入先の国内法による規制もあります。たとえば、フランスでは以下のような独自規制がされており、基準を満たさなければなりません。
- 重金属・汚染物質規制
- 食品添加物・香料規制
- 食品摂食包装材規制
- GMO規制
- ラベル表示規制
EU規則より厳しい基準を設けている国も多々あるため、輸入先の国内法をしっかり確認しましょう。JETROの「農林水産物・食品輸出支援プラットフォーム」をぜひ参考にしてください。
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ヨーロッパへの輸出で必要な手続き
EU規格や国内法をすべてクリアできたら、輸出手続きへと移行します。想定される手続きは、以下の通りです。
- 証明書の取得・施設の登録
- 商標や知的財産権の登録
- 製品ラベルの作成
- 輸出に関わる書類の作成
日本からヨーロッパへ食品を輸出する際に必要な手続きについて、詳しく確認しましょう。
証明書の取得・施設の登録

まず、証明書の取得や施設認定の登録が必要です。畜産なら生産農場、植物なら栽培園、ハチミツなら養蜂場・加工施設の登録をします。
たとえば、生産農場を登録するには、以下のような要件を満たさなければなりません。
EU等向け輸出牛肉の由来する生産農場
- 牛疫又は口蹄疫のワクチン接種を受けた動物が存在しない
- 生産農場から半径10キロメートル圏内の農場において、出荷日から起算して過去30日間、牛疫又は口蹄疫が発生していない
- 日本において生まれ、継続的に飼養された牛又はと畜前から起算して過去3ヶ月間日本において飼養された牛である
など
EU等向け輸出家禽肉の由来する生産農場
- 獣医師が定期的に検査を実施するとともに、以下に掲げる要件が満たされていることを担保している
- 飼養衛生管理基準に基づく以下の記録について、3年間保持する体制がとられている
など
検疫が必要な場合は、条件を満たしている品であることの証明や検査を求められます。
英国、欧州連合、スイス、リヒテンシュタイン及びノルウェー向け輸出食肉の取扱要綱|農林水産省
商標や知的財産権の登録

ロゴ・ブランド名をEU向けに作成しましょう。EU市場でブランドを保護するために、商標登録が推奨されています。商標登録は任意(推奨事項)で、食品輸出の法的要件ではありません。混同されやすいですが、通関・検疫手続きとは別であることに注意してください。
その際、EUにおいて既に同様の名称やロゴが使われていないかを確認し、連邦商標登録を実施します。輸入先の国に直接出願するか国際登録出願をするかのどちらかの方法で登録できます。
製品ラベルの作成

EU内で流通する食品には、食品のラベル表示規制を適用させなければなりません。ラベルに記載する項目は、以下の通りです。
- 食品名
- 原材料リスト(食品添加物が入っている場合)
- アレルゲン
- 正味量
- 賞味期限・消費期限
- 特別な貯蔵条件・使用条件(ある場合のみ)
- EU域内の事業者あるいは輸入行者の名称・住所(商品の責任の所在)
- 使用方法(記載がないと使用が困難と考えられる場合のみ)
漏れがないように製品ラベルを作成しましょう。
輸出に関わる書類の作成

通関に必要な書類を作成し、通関業者に送付する必要があります。必要書類は、以下の通りです。
- 請求書(インボイス)
- 梱包明細書(パッキングリスト)
- 商品説明資料
- dock receipt(B/Lの原稿になる書類)
そのほか動物検疫や植物検疫などの手続きに資料が必要になる場合もあります。
一般的な輸出の流れを知りたい方は、「食品輸出の流れとは?事前に確認が必要な規制や具体的な手続きを解説」をご確認ください。
品目別・ヨーロッパ向け輸出の許可申請
ヨーロッパに食品輸出をする場合、EUの厳しい規制をクリアしたことを認めてもらうための許可申請が必要です。
ここでは、以下の品目における輸出許可申請について解説します。
- 水産物
- 牛肉
- 青果物
- 混合食品
順番に確認しましょう。
水産物

水産物の輸出許可を受けるには、一次生産に関わる市場と施設、加工施設の衛生認定が必要です。以下の品目以外においては、漁獲証明書も求められます。
- ホタテ
- ブリ(ハマチ)
- 太平洋サケ(シロザケおよびカラフトマス)
また、動物検疫の対象であり衛生証明書も必要です。商品が国境検疫所に到着する24時間前までに事前通知しなければなりません。
牛肉

「和牛ブランド」を押し出す日本としては多くの輸出をしたいものの、EUの規制が厳しいためクリアできる商品は限られます。牛肉の輸出許可を受けるには、一次生産から加工に至るまでの衛生基準を満たすことが第一条件です。
生鮮牛肉はEU規則にもとづく衛生およびHACCP管理基準を満たし、国の認定を受けていなければなりません。認定施設リストに掲載されると、認可施設の番号を入手できます。
また、動物検疫の対象であり衛生証明書も必要です。商品が国境検疫所に到着する24時間前までに事前通知しなければなりません。
青果物

青果物をEUに輸出するには、以下の証明を取得する必要があります。
- 生産園地登録と栽培地検査合格証
- 植物検疫証明書の取得
- 衛生認定施設要件
- 適合証明書
- 有機認証(オーガニック製品の場合)
- 原産地証明書
品目によっては、生産園地登録や栽培地検査が必要です。衛生認定施設での栽培が条件となるスプラウトの一例をご紹介します。
- キャベツ
- ケール
- ダイコン
- 根セロリ
- 生鮮または冷蔵のマメ科野菜 など
品目によって細かな要件が定められています。2026年からは残留農薬MRL引き下げとPPWR包装規制が追加・適用される予定です。都度、最新情報を確認するようにしてください。
ハチミツ

EUへのハチミツ輸出には、EUの厳格な衛生基準(特に動物由来製品としての分類)を満たすための書類が必要です。日本から輸出する場合、国産ハチミツは原則不可で、EU認定施設由来の第三国産ハチミツを使用した加工品に限られます。
EUへのハチミツ輸出に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 輸出国政府発行の証明書:ハチミツがEU認定施設由来を証明します。(混合食品・肉製品の場合必須、輸出検査時提出)
- 衛生証明書:農林水産省交付で、混合食品の動物性原料適合性を裏付けます。
- 自己宣誓書:ハチミツ以外動物性原料含む場合必要です。(ハチミツのみ不要、事前相談推奨)
まずは農林水産省動物検疫所に施設登録を申請し、民間の検査機関でEU規格検査を実施してください。JETRO公式サイトに「農林水産物・食品輸出相談窓口(無料)」があるので、輸出手続きやラベル作成支援ツールの利用をおすすめします。
ヨーロッパ輸出における混合食品のポイント
ヨーロッパ輸出における混合食品のポイントは、衛生証明書を準備すること、自己誓約書を利用することです。
それぞれ詳細を確認していきましょう。
衛生証明書を準備する

ヨーロッパに混合食品を輸出する際には、まず「衛生証明書」の準備が最重要ポイントです。EU加盟国は「食品安全に関する一般規則(Regulation (EC) No 178/2002)」を基盤として、すべての食品輸入に厳格な衛生基準を設けています。
衛生証明書がない場合、輸入国での検疫を通過できず、販売どころか港で差し止めになることもあります。特に動物性原料を含むソースや惣菜、レトルト食品などは、原産国の公的機関が発行した証明書で衛生状態の保証が必要です。
衛生証明書は、動物性食品向けに農林水産省などが発行する公的書類で、EU衛生基準(HACCP・施設認定など)適合を保証します。輸出前に申請し、国境検査所(BCP)での提示をする流れです。
現在、輸出相手国によっては電子証明書による申請が可能になっています。デジタル対応を活用することで、手続き時間を短縮し、検疫当局とのやり取りをスムーズに進められるでしょう。
自己誓約書を利用する

混合食品輸出の際にもう一つポイントとなるのが「自己誓約書(Self Declaration)」の活用です。衛生証明書が不要な場合でも、EU規則への適合を示すために、この書類を求められることがあります。
EUの食品規制においては、トレーサビリティ(追跡可能性)が重視されています。加工食品のすべての成分を追跡でき、安全性や適正な原料使用が保証されていることが必要です。輸出者自身が責任を持って「この製品はEUの基準に従っている」と誓約することで、輸入手続きの円滑化と信頼の構築に繋がります。
完全植物由来の和風ドレッシングを輸出する際、動物性原料を一切使っていないことを明記した自己誓約書を添付することで、EU通関時の審査が早まるでしょう。
EUでは製品ごとに要求水準が異なるため、「CertFlex」や「TRACES NT」などのオンライン輸出支援ツールを使うと、必要書類や誓約書のテンプレートを確認できます。これらを活用すれば、更新頻度の高いEU規制にも迅速に対応でき、リスクを大きく減らせるでしょう。
ヨーロッパへの輸出が禁止・制限されている品目
ヨーロッパ(EU)への輸出で禁止・制限される品目は、安全保障、環境、衛生基準により厳格に管理されており、無許可での輸出は罰金や没収のリスクを伴います。品目は、貿易制裁、食品衛生、植物検疫、安全保障貿易管理により多岐にわたり、最新リストの確認が不可欠です。
ヨーロッパへの輸出が禁止・制限されている品目は以下のとおりです。
- 鰹節:EUの衛生基準に満たないため日本産は不可
- 肉製品(牛・豚・鳥)および関連加工品:原則禁止
- 乳製品:原則禁止
- 動物性食品を原材料に含む混合食品:割合によって必要な書類が異なる
- 生鮮果物・野菜:一部を除き制限されることが多い
- 生鮮魚介類:特定のものは制限されることが多い
- 一部の食品添加物:EUで安全性がないとされているため禁止
JETROの輸出管理データベースや経済産業省の安全保障貿易相談窓口を活用し、品目コード(HSコード)で事前照会をしましょう。更新頻繁な制裁リストは毎月確認し、専門行政書士への委託も有効です。
ヨーロッパへ輸出する際の注意点
多くの品目において関税が撤廃となったヨーロッパへの販路拡大は、日本企業にとって大きなチャンスです。ただし、日本からヨーロッパへ食品を輸出する際、以下の注意点に留意しましょう。
- 法制度の理解と遵守
- 動物性食品と植物性食品の違い
- 市場調査の徹底
- パートナーの選択
4つの注意点について詳しく解説します。
法制度の理解と遵守

EUは世界で一番厳しいという言われている食品輸入の規制がされています。境界線が曖昧なグレーゾーンも多く存在するため、通関によって線引きのばらつきもあります。現在は、TRACESシステムなどで標準化が進んでいる状況です。
EU規則や各国における法制度の両方を理解し、遵守しなければヨーロッパへ商品を普及させられません。しっかり輸出したい品目についての規制を確認し、遵守してEU市場を開拓しましょう。
動物性食品と植物性食品の違い

EUへの食品輸出では、動物性食品と植物性食品の規制が大きく異なります。通関でトラブル発生しないためにも、理解しておきましょう。
動物性食品(肉、魚介類、乳製品、ハチミツなど)は、EU認定施設での生産が必須で、厳格な衛生管理を求められます。日本からの生鮮肉・魚は原則輸入禁止で、加工品でも農林水産省発行の衛生証明書と国境管理拠点(BCP)検査が必要です。ハチミツは第三国産でも認定施設由来を証明しなければなりません。
一方、植物性食品(野菜、果物、穀物、加工食品)は施設認定が不要で、植物検疫証明書と残留農薬基準適合が主な要件です。手続きは比較的簡素ですが、種子健康証明やフィトサニタリー証明書を準備します。
混合食品の場合、動物性原料の有無・割合で規制が変わります。輸出前にJETROや農林水産省で品目別リストを参照し、適切な書類を揃えましょう。
市場調査の徹底

輸出したい国の市場調査を徹底しましょう。そもそも市場規模が小さければ、厳しい基準をクリアしてまで商品を輸出する必要はありません。しっかりと売れるという確信を持ってヨーロッパへ進出しましょう。
また、自社商品を売るためには市場に合わせた名称やロゴ、販路の確保が欠かせません。現地における顧客ニーズや競合になりうる現地企業の状況を把握し、販売戦略を立てましょう。
パートナーの選択

輸出したい国におけるパートナーの選択は、成功・失敗の大きな分かれ道です。現地で信頼できる商社などの輸入会社や現地の輸送代理店を見つけ、法を遵守しながら販路拡大を目指しましょう。
すでに日本の食品を販売している輸入会社や同品目の販路を持つ会社には、積極的にアピールすることをおすすめします。
ヨーロッパへの輸出でお困りなら日新運輸工業にご相談ください
関税撤廃や放射線物質による日本産食品の規制撤廃などによって、ヨーロッパへの輸出がしやすくなってきました。しかし、世界一とも言われる食品のEU規則は日本よりも厳しく、戸惑いを感じる業者さまも多いでしょう。
日新運輸工業は貿易サポートにおいて多様な実績を持っています。実務経験が豊富な通関士が在籍しておりEPAの活用もお任せいただけます。
輸出関連の必要書類の作成や配送手配など、ワンストップで専任の担当者が対応いたしますので、安心してご相談ください。
まとめ
ヨーロッパへ食品を輸出する場合、EU規則に加えて輸入先の国独自で定められた基準をクリアしなければなりません。品目ごとに細かなルールがあり、衛生証明書や植物検疫証明書などの添付を求められます。
また、EU規則のなかには境界線が曖昧なグレーゾーンも存在します。国の税関ごとに線引きが異なるケースもあるため、それぞれの解釈に従って法令遵守しなければなりません。
日新運輸工業では世界各国への輸出をするサポートをしており、スムーズな手続きで輸出を完了させます。時間も手間も大幅に削減できるため、ぜひお気軽にご相談ください。

監修者
椎木 健一郎
日新運輸工業株式会社 国際部 部長 / 通関士
通関・国際物流分野で24年の実務経験を持つベテラン通関士。数千件以上の案件に携わり、輸入申告価格の算定や、FDA・EU規制を含む食品輸出の実務に精通。「マルハナジャーナル」では複雑な通関知識を分かりやすく解説し、企業の国際取引を支援している。


