機械を輸出するときの注意点とは?必要な手続きや許可について解説

マルハナジャーナル!

日本製の機械は海外で高品質だと評価されており、高値で取引されることもあります。

そのため、自社の機械を輸出したいと思う事業者の方もいるのではないでしょうか。

しかしながら、日本の機械を企業が自由に輸出してしまうと思わぬところで軍事転用され、兵器にされてしまう恐れがあります。

輸出する機械によっては、経済産業省の許可が必要になることもあるため、注意が必要です。

この記事では、機械を輸出するときに注意したい安全保障貿易管理の規制や許可の申請方法、機械を輸出するときの流れを解説します。

機械を輸出するときに必要な許可の知識や、手続き方法を知っておけば機械の輸出をスムーズに進められ、自社の海外進出を成功に導けるでしょう。

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機械輸出を行う際の規制|安全保障貿易管理

安全保障貿易管理とは、日本が輸出した貨物や技術がテロリストや大量破壊兵器開発を進めている国に渡らないよう、管理するための規則です。

安全保障貿易なしで、日本及び世界各国が自由に貿易してしまうと、大量破壊兵器や兵器を開発している国に日本の高度な貨物や技術が渡ってしまい、世界的な脅威になる可能性があります。

安全保障貿易管理には次の3つの規則があります。

  • リスト規制
  • キャッチオール規制
  • 仲介貿易・技術取引規制

日本から世界へ機械を輸出するときには、海外で戦争などの大量破壊兵器等に使われないよう、これらの規則を遵守しなければなりません。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

リスト規制

リスト規制とは日本から海外へ輸出をするとき、経済産業大臣の許可が必要になる貨物や技術をリスト化したものです。

武器及び大量破壊兵器等の開発に用いられる可能性の高い品目を政省令でリスト化しています。

リストのカテゴリーは次の通りです。

番号大項目(カテゴリー)
1武器
2原子力
3化学兵器
3の2生物兵器
4ミサイル
5先端素材
6材料加工
7エレクトロニクス
8電子計算機
9通信
10センサ
11航法装置
12海洋関連
13推進装置
14その他
15機微品目
参照:安全保障貿易管理**Export Control*貨物・技術のマトリクス表│経済産業省

リストのカテゴリーの下に細分化された規制品目とその仕様(スペック)が記載されています。

リスト規制は毎年改正されるため、機械を輸出する際には、最新の規制リストを確認しましょう。

リストに該当しない貨物や技術はリスト規制の対象外となりますが、機械を輸出する場合、部品や付属品まで規制対象となるケースもあるため注意が必要です。

また、リストに記載されている規制品目は商品名ではなく、法令用語で記載されています。

輸出する機械や使用している部品名がリストに記載されていないからといって、「対象外」と安易に判断してはいけません。

輸出する機械やその部品がリスト規制対象となっていないか、以下の政省令を確認しておきましょう。

記載されている品目政省令
規制対象の貨物輸出令・別表第1」の1項~15項
規制対象の技術外為令・別表」の1項~15項
規制されている貨物や技術のスペック貨物等省令

自社の海外支店に輸出する機械がリスト対象品目の場合も、経済産業大臣の許可申請が必要となる点は理解しておきましょう。

キャッチオール規制

キャッチオール規制とは、リスト規制を補填するための制度です。

リスト規制に該当しない貨物や技術でも、用途や輸出する国によって、大量破壊兵器や通常兵器の開発等に使用されるリスクがあるため、この規制が定められています。

リスト規制の対象国は取引するすべての国や地域ですが、キャッチオール規制では、「グループA」と呼ばれる輸出貿易管理令の別表第3に指定された国々は対象外です。

「グループA」に該当する国が対象外となるのは、自国でも輸出管理や武器の管理を徹底しており、日本から輸出されたものが軍事転用されないことが保証されているためです。

「グループA」に該当しない国で、以下の要件に当てはまる場合は、キャッチオール規制の対象となります。

要件内容
インフォーム要件経済産業大臣から輸出許可申請するよう通知を受けた場合
用途要件輸出される貨物や技術が大量破壊兵器または通常兵器の開発等に使用されるリスクがある場合
需要者要件輸出された貨物や技術を受け取る者が大量破壊兵器または通常兵器の開発をおこなっている、または外国ユーザーリストに該当する場合
参照:安全保障貿易管理について~安全保障貿易管理説明会~

外国ユーザーリストとは、経済産業省が大量破壊兵器等の開発等に関与している可能性の高い企業や組織を掲載し、公表しているリストのことです。

外国ユーザーリストは、経済産業省のホームページで公開されており、常に更新されているので、機械を輸出する前に確認しましょう。

仲介貿易・技術取引規制

仲介貿易とは、三国間貿易とも呼ばれ、文字通り3国間で行われる貿易です。

出典:安全保障貿易管理について~安全保障貿易管理説明会~

例えば、日本国内企業(C社)がアメリカのA社の商品をアジア圏の販売代理店として取り扱っており、日本のC社と韓国のB社で商品売買契約を結んだとしましょう。

その際、商品はアメリカのA社から韓国のB社に直接送られます。

そして、商品代金は輸入者である韓国のB社が売主である日本のC社に支払い、また日本のC社はアメリカのA社に支払う形になります。

このように商品と流れとお金の流れが異なる貿易取引を仲介貿易または三国間貿易と呼ぶのです。

この貿易の形は商品だけでなく、技術にも当てはまります。

このような貨物や技術が日本を経由しない外国相互間の取引でも、次の要件に該当する場合は、経済産業大臣の許可が必要になります。

  • 輸出する貨物や技術が「輸出令・別表第1」または「外為令・別表」の1項に該当するもの
  • 輸出する貨物や技術が「グループA」に該当しない国や地域間であり、大量破壊兵器等の開発等の恐れがある
  • 経済産業大臣から許可の申請をすべき旨の通知を受けた

上記の要件に当てはまる貨物や技術を日本主導で三国間貿易するとき、産業経済大臣の許可を得ないままやり取りをすると法律違反となり罰則が課されるので注意が必要です。

機械を輸出するときの手続きと流れ

機械を輸出するには、輸出品が安全保障貿易管理の規制の対象となるかを確認し、経済産業省の許可が必要か否かを確認しなければなりません。

その他にも、機械を輸出するにはさまざまな手続きが必要です。

ここからは機械を輸出するときの手続きとその流れをステップごとに見ていきましょう。

該非判定をする

機械輸出するには、まず機械が安全保障貿易管理の規制対象になるかを判断する「該非判定」をします。

該非判定を誤ると、意図せず無許可輸出に問われる可能性があるため、慎重に行わなければなりません。

貿易に慣れていない企業が、該非判定を自社でするのは至難の業です。

輸出代行業者に依頼したり、専門家からのアドバイスを受けたりしながら進めていくことをおすすめします。

経済産業省への輸出許可申請を行う

該非判定によって、輸出する機械が経済産業大臣の許可が必要である「該当貨物」だった場合は、輸出許可申請が必要です。

輸出する機械がどの品目に該当し、どこの国へ輸出するかによって申請先が異なりますので、経済産業省の安全保障貿易管理のホームページで確認しましょう。

なお、該非判定で輸出する機械が「非該当貨物」だった場合は、該非判定書を作成する必要があります。

該非判定書に決まった様式はありませんが、以下の項目の記載が必要です。

  • 製品(機械)の名称
  • 型式
  • 機械の仕様(スペック)
  • 該当項番
  • 判定結果
  • 判定根拠
  • 判定日

経済産業省が公開している安全保障貿易管理説明会資料の参考様式を活用して作成するとよいでしょう。

機械の梱包・輸出関連の必要書類を作成する

経済産業大臣への許可申請をしたら、審査期間中に機械の梱包・輸出関連の必要書類を作成しておきましょう。

輸出申告に必要な書類は次の通りです。

  • インボイス
  • パッキングリスト
  • 非該当証明書・経済産業大臣の許可書
  • 通関委任状
  • 商品説明資料

詳しくは以下の記事で解説しているのでご覧ください。

合わせて機械の梱包作業も行う必要があります。

輸送費の算出方法の中には、重量によって算出するものもあり、つい簡易梱包を選択してしまう事業者もいるかもしれません。

しかし、機械の中には精密な部品が含まれていることもあり、梱包が疎かだと故障や破損のリスクがあります。

輸送によって、機械が破損してしまうとその後のフォローに費用がかかり、売上に影響が出てしまいます。

機械へのダメージを最小限に抑えるためにも、機械輸送に適した梱包を選択しましょう。

通関業務を行う

通関業務とは、輸出入に必要な手続きや申請のことをいいます。

通関業務を怠るだけでなく、手続きの不備や虚偽の申告があると密輸扱いとなり、関税法の法令で罰則が課されます。

通関業務の流れは次の通りです。

  • 輸出する機械を保税地域へ搬入
  • 税関による輸出書類の審査・貨物検査
  • (問題がなければ)輸出許可書の発行
  • 機械をコンテナに積み込む

税関による貨物検査では、主に2つの検査が行われます。

  • 貨物の中に違法なものが混入していないかを確認する検査
  • 貨物の内容が申告内容と一致しているかを確認する検査

貨物検査にかかる費用は事業者に請求されるので、準備しておきましょう。

なお、検査結果は当日に出る場合と後日に出る場合があります。

税関による貨物検査は法律によって定められており、拒否はできません。

機械をコンテナに積んで出港する

税関による輸出書類の審査と貨物検査で問題ないと判断されると、税関より輸出許可書が発行されます。

輸出許可が発行されたら、保税地域から貨物の搬出手続きができるので、機械をコンテナに積んで、コンテナヤードに持ち込み船積みします。

機械輸出の手続きや許可申請を怠ったときの罰則

日本製の機械は高品質なため海外で高額売買されることから、近年、多くの企業が機械輸出に参入しています。

しかしながら、安全保障貿易管理の認識不足から、経済産業大臣の許可が必要なのに無許可で輸出してしまい、意図せず罰則を受けるケースが多発しています。

輸出管理が適切に行われないと関税法により「不正輸出」に問われ、10年以下の懲役、個人の場合3000万円、法人の場合10億円の罰金が課されます。

ただし、これはあくまでも「悪意」を持って意図的に不正輸出を実施しようとした場合です。

該非判定のミスや事業者の認識不足による不正輸出は、再発防止指導に留まります。

しかしながら、「悪意」がないと判断されるまでに厳しい取り締まりを受ける必要があり、疑いが晴れるまでにはかなりの労力が必要になるでしょう。

このような事態にならないよう、機械の輸出を検討している事業者は、「自社が輸出しようとしている機械は、安全保障貿易管理の規則に該当しないか」省令法の内容を理解し、確認する必要があります。

日本の機械輸出ランキング

日本の機械の輸出は、世界から見てどの位置にあるのでしょうか。

機械の種類別に2022年度の輸出額と国別ランキングをまとめてみました。

順位 機械のカテゴリー 詳細

輸出額
(百万アメリカドル)

3位 自動車

乗用車、貨物車、バスなどの自動車のほかトレーラー、二輪車、自転車

133,564

7位 電気機器 電力機器、電子機器、電子部品、半導体、送電機器、家庭用生活家電、医療用電子診断機器 68,115
4位 特殊機械 業用機械、トラクタ、建設機械、印刷機械、製紙機械、食品加工機械など 64,910
5位 一般産業機械・機器 加熱・冷却機器、ポンプ、構内車両、クレーン、塗装機器、工具、洗浄機器、ベアリング、歯車、シャフト、バルブ 38,361
9位 テレビ・電話・通信機器 テレビ、モニター、ビデオ、ラジオ、電話、録画機器、通信装置・機器 38,085
4位 計測機器・制御機器 計測・測量機器類、分析機器類、制御機器類 22,156
14位 オフィス機器・コンピューター コンピューター機器、計算機、コピー機、プリンタ及び周辺機器、部品 11,944
7位 医療機器 医療用電子診断機器、放射線機器 7,676
参照│グローバルノート-国際統計・国別統計専門サイト

ほとんどの項目で世界ランキング10位以内にランクインしています。

このことから、日本製品の機械は海外から高い評価を受けており、多くの需要があることが見て取れるでしょう。

また、近年では中古機械の輸出も盛んになっており、日本で使用された多くの中古機械が海外で再利用されています。

機械の輸出でお悩みなら日新運輸工業へご相談ください

日本から世界へ機械を輸出するには、安全保障貿易管理の規則に従い、経済産業大臣の許可を申請したり、通関手続きに必要な資料を揃えたりと手間と時間が必要です。

また機械はデリケートで精密なものもあるため、輸出をする際には、梱包や輸送方法も検討する必要があります。

これらを一事業者が単独で行うのは至難の業です。

日新運輸工業は物流会社ゆえ輸送手段のコーディネートには自信があります。

物量や保管方法、仕向国に応じた提案と手配もしているので、機械の輸出を検討している事業者はぜひご相談ください。

輸出国までの最適な輸送手段の選択や手配をご提案いたします。

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以下サービス紹介ページより食品輸出の問い合わせができますので、ご相談お待ちしております。

日新運輸工業の食品輸出サービス

まとめ

日本製の機械は、海外での需要が高いため多くの国へ輸出されています。

2022年の機械類の輸出額はどれも世界ランク10位以内にランクインしています。

しかし高品質であるがゆえに、日本製の機械類を世界各国へ安易に輸出してしまうと、日本製の機械が海外で兵器など軍事転用されてしまう恐れがあり大変危険です。

平和で安全な貿易を維持するため、日本では安全保障貿易管理の規則に従い、軍事転用の恐れがある機械を輸出する際には、産業大臣の許可が必要になります。

一般家庭で使用するような機械も、規則の対象となることがあるので、輸出前に確認しましょう。

ただ、自社で製造した機械が安全保障貿易管理の規則の対象になるか否かを素人で判断するのは至難の業です。

その他にも機械を輸出する際には、さまざまな手続きや機械が壊れないよう梱包にも気を付ける必要があります。

自社で通常業務をしながら、輸出の手続きをするのは大変なので、機械の輸出に慣れた業者に一部業務を委託しながら進めていくのがおすすめです。