輸入割当制度(IQ品目) ~IQ品目該当、非該当について~
みなさん、こんにちは!
今回は、「輸入割当制度」についてご説明したいと思います。
輸入割当制度については、弊社“マルハナジャーナル”
「税関から貨物をとめられた!(通関トラブルあれこれ)~ 輸入編②:「他法令、原産 地虚偽・誤認」
の中でも少しだけ触れましたが、今回は、もう少し詳しく紹介します。
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輸入割当制度とは
外国為替及び外国貿易法に基づく輸入割当(Import Quota)制度は、品目ごとに設定された輸入枠内で、各輸入者に割当てを行う輸入管理措置です。
貿易関係者は、輸入割当てのことを、通称「IQ」(アイキュー)と呼んでいます。
この制度は、「国内産業の保護」を目的としていますので、取得した輸入枠内を超えて輸入することはできません。 IQ対象品目は、輸入が自由化されていない「非自由化品目」です。
IQ対象品目
IQ対象品目には、水産物とオゾン層破壊物質がありますが、ここでは水産物について説明させていただきます。
※ オゾン層破壊物質
オゾン層を破壊する物質等に関するモントリオール議定書附属書FのグループI及びグループⅡ に属する物質です。
IQ対象の水産物
現在、あじ・いわし・さば・いか・たらの卵・こんぶ・のりの調整品など、18品目がIQの対象となっています。
どのような水産物がIQに該当するかについては、ここで記載すると長くなってしまいますので、申し訳ございませんが、経済産業省のホームページにてご確認ください。
輸入割当て(IQ)対象水産物の属名、製品形態等の一覧(経産省HP)
IQ枠の取得方法
IQについては、品目ごとに原則年1回の輸入発表(申請手続き等の発表)が行われます。経済産業大臣(貿易経済協力局貿易管理部農水産室)に輸入割当てを申請し、輸入割当取得後に割当数量を限度として輸入承認申請を提出し、輸入承認証を得て初めて輸入することができます。
割当方法は主として次の方法があります。
① 商社割当て(実績割当て)
② 需要者割当て
③ 漁業者割当て
④ 海外水産開発割当て
⑤ 先着順割当て(はじめて輸入割当てを申請する方が利用できます。)
先着順割当ての申請資格は、「・ 食料品の輸入実績があること、 ・ 輸入発表日以降に申請対象品目の輸入契約を締結していること」となっています。その他の申請資格詳細については、輸入発表をご確認ください。
なお、輸入割当てを受けた方は、一定期間内に割り当てられた数量(又は金額)の80%以上を消化できなければ、次年度の申請をすることができなくなります。
※ 所有権の移転しない委託加工貿易に基づく貨物の輸入など、特殊事由により水産物輸入割当品目を無償で輸入する場合は、申請の手続が異なりますので注意が必要です。
IQ品目を輸入する場合の留意点
保税転売について
保税転売(国内の保税地域内での売買)については、経済産業省のHPにおいて、次のように記載されています。
日本の保税地域において認められている輸入割当て対象品目の売買行為は、非居住者である輸出者が、購入者未定のまま日本の保税蔵置場に輸入割当対象品目を搬入し、当該貨物を一定期間内(関税法第43条の3に定める外国貨物を保税蔵置場に置くことの承認を必要とするまでの期間)に、輸入割当てを取得している者に売却した上で、この購入者(当該輸入割当てを取得している者)が自ら輸入通関する場合のみです。 (経済産業省HPより) |
ですので、IQ枠を持っていなければ保税地域内で購入することはできません。
いわゆるIQの“枠貸し”は認められていませんので、ご注意ください。
輸入割当てが不要になる場合
次の2点全てを満たす場合は、輸入割当てが不要となります。
① 総価額が18万円以下であること
② 無償貨物であること
なお、「総価額」とは、税関に申告する価格の総額をいいます。
例えば100万円の他の有償貨物とともに18万円以下の無償貨物(IQ品目)を輸入する場合には、この特例は適用できず、輸入割当てが必要となります。
IQ対象品目を個人使用として輸入する場合
私もときどき近くのスーパーマーケットで韓国のりを買いますが、「韓国のり」もIQ品目です。
韓国へ旅行される方は、お土産で韓国のりを買ってこられることもあると思いますが、実は、個人使用として輸入する場合にはIQ枠取得は不要ですが、数量に制限があります。
※ 輸入割当てが不要となるのは、「個人的使用に供せられ、かつ、売買の対象とならない程度の量の貨物に該当する場合」に限られていますので、ご注意ください!
(数量制限の例)
のり | 1人(1世帯)1月1,000枚まで (枚数による計数が困難な形状の場合は、3グラムを1枚として換算する。) |
あおのり及びひとえぐさ | 1人(1世帯)1月250グラムまで |
こんぶ | 1人(1世帯)1月5キログラムまで (干しこんぶ換算数量。こんぶを原藻で輸入する場合は、原藻重量に5分の1を乗じた数量) |
IQ該当・非該当の判断(品目(関税)分類との関係)
IQ枠を取得していない方が水産物を輸入する場合は、事前にIQに該当するか又は非該当であるかについて確認することが非常に重要です。
前述しましたとおり、IQ対象品目については、IQ枠を持っていないと輸入することはできません。
IQ対象品目については、経済産業省のHPに掲載しており、それぞれの輸入発表を見ると、対象品目の「関税率表の番号等」を記載しています。
つまり、IQ対象品目は、関税率表の番号等で特定されているのです。
「いわし」の場合
では、「いわし」を例に見てみましょう。
「いわし」は“煮干し”の状態になってもIQ該当となります。次の表の中に“煮干し”があります。
上の2つの関税率表の番号等に記載されているとおり、IQに該当する「いわし」、「煮干し」は、全て第3類に分類されるものです。
一方、関税率表の第16類に分類される“いわしの調整品”は輸入発表には記載がなく、IQ非該当となります。
しかしながら、いわしを加熱処理や調味料に漬け込んで、IQ非該当である第16類の“いわしの調整品”として輸入申告しても、税関の審査・検査の結果、「加熱不十分」又は「調味不十分」であり、第16類ではなく第3類に分類されるものである、とされてしまうと・・・そうです、IQ該当となってしまいます。IQ枠を持っていないと輸入することはできません。
第3類(IQ該当)に分類される事例について、次の「事前教示回答事例」をご覧ください。
これは、商品を本格的に輸入する前に、「事前教示制度」(品目分類関係)を利用して税関へ照会を行って得られた回答事例です。
本品は、かたくちいわしやこんぶなどを同一包装(パック)にした“出汁パック”です。
この中の①乾燥かたくちいわしは、煮沸後に乾燥したものです。
おそらく照会者は、IQ非該当のものとして事前教示の照会を行ったもの?と思われますが、回答結果は、「“容易に(他の材料と)分離可能”であり、“0305項の規定”により、①の乾燥かたくちいわしについては第3類(IQ該当)に分類される」とされています。
もう一つ、こちらは第16類(IQ非該当)に分類される事例「事前教示回答事例」です。
このように、第3類(IQ該当)と第16類(IQ非該当)の物品の区分については、簡単に判断できるものではありませんので、事前にサンプルを入手して輸入予定地を管轄する税関に事前教示の照会を行うことをお勧めします。
事前教示制度とは・・・ 輸入予定貨物に関する資料、関連データ、サンプルなどをあらかじめ税関に提出し、当該貨物の関税分類(税番)や関税率などについての照会を、原則として文書により行い、文書により回答を受けることができる制度です。税関が回答した文書(事前教示回答書)の回答内容については、当該回答書が発出されてから3年間、輸入申告の審査の際に尊重されます。 |
まとめ
いかがでしたでしょうか?
IQ該当、非該当の判断はとても難しいものですね。
IQに該当するか、非該当であるかについては、詳しくは、経済産業省にお尋ねください。
水産物の輸入割当て (METI/経済産業省)
また、関税分類については、輸入予定地を管轄する税関にお尋ねください。
輸出入通関手続や税番・税率等に関するお問い合わせ : 税関 Japan Customs
最後に
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