アメリカへの食品輸出をしたいと考えていても、必要な手続きを把握している人は少ないのではないでしょうか。
アメリカへ食品輸出する際は、アメリカ食品医薬品局であるFDAの登録が必須となっています。さらに、食品の品目ごとに所轄の省庁があり、関係省庁での手続きもこなすことになるのです。
この記事では、アメリカ向けの食品輸出で必須の手続きや、輸出の流れ、品目別の手続きや規制について解説します。アメリカへの食品輸出を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
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日本からアメリカへ食品輸出する際にはFDAの登録が必須
日本からアメリカへの輸出食品には、FDAの登録が欠かせません。FDAとはアメリカ食品医薬品局の略称で、日本でたとえると厚生労働省に近い機関です。
2001年9月の米国同時多発テロをきっかけに、公衆衛生や安全保証を目的としたバイオテロ法が成立しました。同法に基づき、アメリカへ食品を輸出する企業は、FDAへの登録が義務となったのです。
具体的な手続きは、輸出食品を製造した施設について、責任者や施設の所在地、施設が扱う食品の情報などを申告します。さらには、米国代理人も指定することになるでしょう。
まずはFDAの登録方法について、各ステップごとの要点をお伝えします。
食品を製造した施設の登録
FDA登録の対象となる食品は、アメリカ国内で人間や動物が消費するものと定義されています。ほぼ全ての食品といっても過言ではなく、対象外は殺虫剤と、ごく一部の食品接触物質のみです。
該当する施設は、輸出食品を製造する施設だけでなく、加工や梱包、保管をする施設までも含まれます。
具体的な手続きは、FDAのサイトにアクセスし、下記の情報を登録してください。
- 対象となる施設の名称や所在地、連絡先
- 施設を運営する企業の名称や所在地、連絡先
- 企業の経営者や、作業する者もしくは代理人の氏名と連絡先
- 施設で扱う食品の一般食品分類名
- 米国代理人の氏名と連絡先
- 登録をした者に管理権限があり、提出した情報に偽りがないという宣誓文
下記に紹介するサイトは、農林水産省によるFDA登録方法の手引きです。ただし2022年に作成されたもので、変更されている可能性があるため、参考程度に留めてください。
米国食品医薬品局 食品施設登録ユーザーガイド:ステップバイステップ操作手順(仮訳)
米国内における代理人の指定
FDAに登録する施設がアメリカ国外なら、米国代理人を指定しなくてはなりません。日本からアメリカへの食品輸出には、米国代理人が必須と認識してください。
米国代理人に求められる条件は、下記のいずれかに該当することです。
- アメリカ国内に居住している人
- アメリカに滞在している人で、かつアメリカ国内で継続的にビジネスを行っている
FDAに施設の情報および米国代理人を登録し、代理人の確認が完了すると、登録番号が発行されます。
事前通知
アメリカへ輸出するすべての食品や飲料は、FDAへの事前通知が求められています。バイオテロ法に基づいた事前通知を怠ると、輸出品が通関できなかったり、FDA関連の施設へと移動されたりするのです。
事前通知の方法は2種類あり、一方は貿易の専門業者が利用するシステムとなっています。業者に依頼しない前提なら、下記の「事前通知システムインターフェース(PNSI)」欄をご参照ください。
事前通告システムインタ ーフェース(PNSI) | ・FDA事前通知のためのシステムサイトにアクセスし、事前通知に必要な情報を提供する ・到着予定日の15日前から申し込み可能 |
税関国境警備局(ABI/ACS) | ・通関業者や輸入業者が利用するシステム ・到着予定日の30日前から申し込み可能 |
また、事前通知には期限があり、輸送手段によって差があります。航空輸送は到着4時間前が期限で、海上輸送は到着8時間前です。国際郵便を用いる際は、輸送前に事前通知手続きを完了させて、輸出品に事前通知確認書を添付します。
事前通知の手続きについては、下記のガイドを参考にしてください。
米国食品医薬品局 輸入食品の事前通知 クイックスタートガイド(仮訳)
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FDAルール違反に対する処罰
FDA登録せずに食品を輸送すると、通関拒否される可能性が高まります。ルール違反が悪質と見なされるとペナルティを課され、ついには刑事告訴に発展することも懸念されます。
FDAルール違反の処罰については、以下のとおりです。
①警告書 | ・米国代理人宛にFDAから警告書が届く ・法的な問題点を指摘されたり、改善や変更を促されたりする |
②差し押さえ | ・違反内容が悪質と判断された場合、FDAによって商品を差し押さえられる |
③活動禁止 命令 | ・違反内容が改善されずに長期化すると、裁判所から活動禁止命令が出される |
④刑事告訴 | ・FDAの職権により事業者が刑事告訴される ・罰金刑や懲役刑を課せられる可能性もある |
処罰を受けないためにも、FDAは遵守するようにしましょう。
アメリカへ食品輸出する流れ
FDAの事前通知手続きが完了したら、いよいよ商品の出荷をすることになります。
日本とアメリカを結ぶ物流は整備が進んでおり、選択肢も豊富です。輸送手段を確保して、貨物の保険も手配しましょう。
輸送の準備が整ったら、通関に向けて貨物を保税地域へ搬入します。ここからは、出荷後の流れや諸手続きについて解説していきましょう。
輸出の通関手続きを行う
輸出通関の手続きや貨物の積込は、一般的には輸出する側が行います。通関に必要な書類は、輸出品の原料によって多種多様です。
食品別の対策は後述するとして、まずは代表的な通関書類には、商業インボイスやパッキング・リストが挙げられます。
税関によって書類審査や現物検査が実施され、問題がなければ輸出許可が下ります。
船積書類を輸入者に送る
船積書類とは、貨物の権利証券を中心とした書類の一式を指します。輸出先や品目によって内容は異なりますが、船荷証券やインボイスはほぼすべての船積書類に含まれるでしょう。
貨物の積み込みが行われると、貨物の預かり証として船荷証券が発行されます。
一般的に、輸出者は商品代金の支払いと引き換えに、船積書類を受け取ることができます。輸入者に送るか、銀行経由で輸入者の元へ届けるという流れになるでしょう。
食品がアメリカに到着したら検査・検疫を行う
貨物が国境を越えアメリカへ到着すると、アメリカ側でも通関手続きをしなくてはなりません。輸入者が税関に申告して手続きを開始します。
食品の通関は、FDAと税関が連携して実施されるのが一般的です。FDAによる書類審査や到着地検査の結果、規制に適合していなければ、貨物は留め置かれます。
通関手続きをクリアできた場合は、輸入者は船積書類と引き換えに、貨物を受け取れば輸出の工程が完了です。
アメリカへの食品輸出でお困りなら日新運輸工業へご相談ください
日新運輸工業は物流会社として、輸送手段をカスタマイズしてご提案しており、手配をすることも可能です。海外輸出する食品は、常温・冷蔵・冷凍のいずれも対応していて、海上と航空輸送のどちらもご依頼いただけます。
弊社は貿易会社としての実績もあり、通関業務も対応可能です。豊富な実務経験を持つ通関士が在籍しているので、スムーズな輸出手続きが実現します。
輸出でわかりにくいことがあるなら、どうかお気軽にお問合せくださいね。
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品目別・アメリカ向け食品輸出の手続きと規制
日本からアメリカへの輸出食品は、長らく東京電力福島第一原子力発電所の事故による規制がありました。ただし、2021年9月に規制が撤廃されています。
一方で、ほとんどの野菜は輸出規制の対象だったり、指定地域外で漁獲した水産物は輸出できなかったりします。アメリカへ輸出できる食品かを確認することですら、決して簡単ではありません。
アメリカで輸出規制されている食品をリストアップしながら、輸出手続きについてもご紹介していきます。
水産物
アメリカへ輸出される水産物は、大別すると、米国海洋大気庁(NOAA)の管轄と、それ以外の2種です。NOAAは監視制度を設立し、一部の水産物に対して報告や記録保持を要求しています。
エビの採取方法にも規制があり、絶滅危惧種のウミガメを保護するために定められました。この規制により、カメが生息しない地域のエビや、養殖エビのみ輸出可能となっています。
NOAAが指定した優先魚種があり、該当する水産物を輸出する際には、漁獲情報や陸揚げ情報を提供しなくてはなりません。優先魚種にはマグロ類やメカジキ、エビ類などが含まれます。
海産哺乳類を保護するためのドルフィンセーフ認証など、さまざまな輸出規制や制限があります。詳細は下記サイトから確認してください。
水産物の輸入規制、輸入手続き(米国) | 日本からの輸出に関する制度 – 農林水産物・食品 – 米国 – 北米 – 国・地域別に見る – ジェトロ
畜産物
2023年8月の時点において、豚肉と鶏肉は、日本からアメリカへ輸出できません。牛肉は輸出可能となっており、日本で生まれ飼育された牛の可食部位のみです。
さらに、アメリカへ輸出する牛肉は、食品安全検査局(FSIS)が指定する施設での加工が条件となっています。日本においては、厚生労働省が認定した施設で処理を行い、食肉衛生検査証明書を申請しましょう。
アメリカ輸出向けの食肉処理ができる施設や、衛生検査証明書の手続きについては、以下のサイトからご確認ください。
青果物
日本からアメリカへ輸出できる青果物は、2023年8月の時点では、きわめて限定されています。具体的には、うんしゅうみかん、日本なし、かき、ながいも、りんご、イチゴ、メロンのみです。
未加工の青果物は、米国農務省の動植物検査局(APHIS)が許可した品目に限り、輸出が認められます。また品目によっては、日本での防疫処理が必要になったり、APHIS発行の輸入許可証を求められたりするでしょう。
アメリカに輸出できる青果物の品目と、関連規約については、APHISのサイト上のデータベースが最新情報を網羅しています。
残留農薬についても注意が必要です。農作物の品目ごとに、残留農薬の許容量が設定されており、基準値を超えた食品は輸出できません。
農薬の種類および最大残留農薬限度の承認と登録は、環境保護庁(EPA)が担当しています。規制されている農薬の種類や許容量を入手するには、EPAのサイトにアクセスしてください。
菓子
日本からアメリカへ菓子を輸出する際は、かならず原料に着目してください。輸出規制に該当する成分が含まれている可能性があるからです。
たとえば豚や鶏由来の畜肉エキスを含むお菓子は、アメリカへ輸出できません。これは食肉の輸出規制と同様に、日本産の豚と鶏をアメリカは受け入れていないからです。
また、原料に牛乳や生クリームなど乳製品が含まれる場合、規約が細かく分かれていて、求められる許可も様々です。
アメやジュースなど子供向けの食品は、長期的な鉛のサンプル調査が実施されているため、通関後にも検査対象となり得ます。
清涼飲料水
一般的な清涼飲料水は、密封容器に詰められており、常温で保管し運搬する機会があるのではないでしょうか。アメリカでは、密封容器で常温流通される食品は、低酸性缶詰食品に該当する可能性があります。
低酸性缶詰食品をアメリカへ輸出する際は、缶詰食品工場として施設を登録し、登録番号を取得します。そして製品の殺菌工程をFDAに申告し、安全であることを認めてもらわなくてはなりません。
低酸性缶詰食品の対象であろうと、常に冷蔵または冷凍で保存し流通させるなら、施設登録も殺菌工程の申告も免除されます。
アルコール飲料
アルコール飲料を輸出する際は、まず日本国内で、輸出酒類卸売業免許を取得する必要があります。この卸売免許については、税務署による「酒類卸売業免許の申請等の手引」をチェックしてください。
次は、米国財務省の酒類たばこ税貿易管理局(TTB)から輸入許可を取得しましょう。別件で、輸入業者としての許可もTTBに申請する必要があります。
アルコールを販売するには、州や地方自治体においても、免許取得や登録が求められるでしょう。それぞれの州に独自の規定や規制があるため、販売先や商品によって、必要となる手続きも異なります。
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アメリカへ食品を輸出する際の注意点
食肉を輸出する際は、農務省(USDA)の管轄になります。アルコール飲料の輸出は、酒類タバコ税貿易管理局(TTB)からの許可取得が必須です。
輸出する食品の原料が多数ある場合は、所轄が複数の省庁になることも懸念されます。食肉のエキスや乳製品など動物由来の原料を含む加工食品、水産加工品などが該当します。
さらに、アメリカ国内で食品の販売をするなら、州や地方自治体への届け出も必須です。州や地方自治体それぞれに、独自の免許や許可申請の規定があるため、かならず確認してくださいね。
まとめ
アメリカ向けの食品輸出にFDA登録は欠かせません。アメリカへ輸出する食品を製造した施設や、加工、梱包、保管をした施設が対象となります。
また、食品の安全や輸入制度を所管する省庁にて、申請や届出をする機会もあるでしょう。さらには販売する州や自治体でも、申請が必要となる可能性があります。
アメリカ向け食品輸出の手続きは煩雑で、輸出できる食品の判別からつまづいたとしても、決して珍しいことではありません。
輸出の専門業者に依頼をすると、諸手続きが滞りなく進行するのは当然として、手間を大幅に短縮できるのもメリットですよ。