2024年問題が長距離輸送に与える影響とは?物流事業を滞らせないための対策を紹介

マルハナジャーナル!

2024年4月から物流業界に適用される働き方改革関連法により、ドライバーの労働時間が厳しく制限されるようになります。

ドライバーの労働環境を改善したいと思う一方で、これからの長距離輸送をどのようにすればよいのか悩んでいる事業主も少なくないでしょう。

2024年4月以降も今まで通り長距離輸送事業を継続したいなら、トラック輸送に頼らない輸送方法を検討したり、競合他社と共同配送したりするなどの対策が必要です。

この記事では、物流業界の2024年問題が長距離輸送に与える影響やその対策、新たな輸送手段を解説します。

2024年問題以降の長距離輸送で生じる影響とその対策を知っておけば、より効率よくコストを抑えた輸送方法を選択することができるでしょう。

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場合によっては物流費用の削減が可能な場合があるため、以下よりお気軽にお問い合わせください。

長距離輸送に適した方法

長距離輸送の主な手段は次の3つです。

  • 鉄道輸送
  • 船舶輸送
  • トラック輸送

それぞれの輸送手段のメリット・デメリットを見ていきましょう。

鉄道輸送

鉄道輸送は、かつて日本の国内貨物輸送の主要部分を担っていた輸送法です。

道路整備に伴うトラック輸送が伸びたことから、鉄道輸送のシェアは減少し、近年では鉄道輸送が占める割合はわずか1%でした。

鉄道輸送は他の長距離輸送と比べて、環境負荷への負担が少ないのが大きなメリットです。

トラック輸送から、鉄道輸送に切り替えることで、CO2の排出量を約90%も削減することができます。

また、鉄道輸送に欠かせないコンテナを扱う貨物駅は全国約140箇所設置されており、毎日400本もの貨物列車が走っています。

鉄道は、渋滞など遅延もなく定時運航しているため安定した輸送が可能です。

船舶輸送

船舶輸送とは、船を利用して貨物や人を目的地へ輸送する方法です。

長距離輸送のシェアは貨物量ベースで見るとトラック輸送がトップですが、輸送距離を含めた輸送の総量であるトンキロベースで見てみると船舶輸送の割合は40%を超えます。

船舶輸送では、大量の荷物を一度に運ぶことができるのが大きなメリットです。

そのため、他の輸送手段と比較すると輸送コストが安くなります。

一方で、輸送時間が長いため配送スケジュールを長めにとる必要があります。

そのため、緊急性の高い商品や鮮度が落ちやすい食品の輸送には向きません

台風接近などの自然災害により、船舶のスケジュールが大きく遅延してしまうというデメリットがあります。

トラック輸送

トラック輸送は、その名の通りトラックで目的地まで輸送する方法です。

トラック輸送は一度に運べる貨物量は、他の輸送方法と比べると少なくなります。

しかし、鉄道輸送や船舶輸送と異なり貨物の積み替えがないため、目的地の場所までダイレクトに輸送することが可能です。

利便性の高さから、トラック輸送が占める長距離輸送のシェア率は貨物量ベースで約9割、輸送距離を含めた輸送の総量であるトンキロベースだと約5割を占めます。

また到着時間や天気を踏まえて、自由に経路を選択できるのもトラック輸送のメリットの1つです。

一方で、トラックは一般道を走行することから、事故リスクも高く、事故に遭うと荷物の破損やトラックの損傷などの対応が必要になります。

物流業界の2024年問題が長距離輸送に与える影響

2024年4月に働き方改革関連法が物流業界に適用されることにより、ドライバーの年間時間外労働が960時間に制限されます。

ドライバーの年間時間外労働に上限が規定されたことで、長距離輸送では次のような問題が生じることが予想されます。

  • 1日の走行距離が減少する
  • 荷主のコスト増加する
  • ドライバー不足が加速する
  • 配送にかかる時間が増える

これらはまとめて物流の2024年問題とも呼ばれます。ここからはそれぞれの問題を詳しく見ていきましょう。

1日の走行距離が減少する

ドライバーの年間時間外労働に上限が規定されたことで、1日の走行距離が減少します。

厚生労働省が公表した令和3年度のトラック実態調査によると、長距離輸送ドライバーの1日の労働時間が13時間以上であると答えた割合は37.5%となっています。

つまり、従来では1日あたり13時間労働が基本だと言えるでしょう。

ところが、2024年以降は1日当たり4時間以上残業すると年間960時間を超えてしまう恐れがあるため平均11時間に収める必要があります。

たとえば、今まで13時間の労働時間で600km走行できたとしましょう。

2024年4月から1日あたりの労働時間を11時間に収めると、従来より労働時間が約20%削減されます。

そうなると走行距離も20%短くなり、480kmにとどまります。

そのため目的地が長距離になればなるほど、事業者はドライバーの人員を増やさなければならない状況になってしまうのです。

「人員を増やせないから…」といって時間外労働の上限を超えると、労働基準法違反となり事業者は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

荷主のコスト増加する

ドライバーの年間時間外労働に上限が規定されたことで、荷主のコストが増加する恐れがあります。

トラックドライバーの労働時間が制限されることで、物流業界全体でドライバーの数が足りなくなり、雇用を増加させるために人件費が高騰化するためです。

そのため、トラック事業者は増加した人件費を補うため値上げをせざるを得なくなります。

既に、物価上昇や燃料費の高騰により値上げを行っている事業者も多く、今後はより多くの事業者が荷主へ値上げを交渉してくることが予想されます。

ドライバー不足が加速する

ドライバーの年間時間外労働に上限が規定されたことで、ドライバー不足が加速する恐れがあります。

トラックドライバーの1日あたりの走行距離が短くなることで、目的地まで貨物を届けるために新たなドライバーを当てる必要があるからです。

長距離ドライバーの給料は、基本給に走行距離に応じた手当が支払われます。

しかし2024年に適用された働き方改革関連法により、1日当たりの労働時間が減るため、走行距離もその分減ります。

そうすると、トラックドライバーの収入に影響を及ぼしかねません

そうなるとトラックドライバーはより待遇のよい事業者へ転職しようとするため、人件費を確保できない中小事業者では深刻なドライバー不足に陥る恐れがあります。

配送にかかる時間が増える

ドライバーの年間時間外労働に上限が規定されたことで、配送にかかる時間が増える恐れがあります。

ドライバーの人材不足や1人あたりの配送時間の制限により、今まで単独で任せていた長距離輸送を複数人で対応する必要があるためです。

今まで単独で行っていた業務を複数人で対応するとなると、その分コストが増加します。

運送事業者は輸送コスト削減のため、一部の地域への配送を制限したり、配送日数を減らしたりするなどの対応をする可能性もあります。

2024年問題以降も長距離輸送を効率よく行うための対策

2024年以降、ドライバーの労働時間の規制が厳しくなることでドライバー単独の長距離輸送は難しくなります。

ここからは、2024年問題以降も長距離運送を効率よく行うための対策を見ていきましょう。

  • モーダルシフトの導入
  • 複数人のドライバーで中継輸送を実施
  • 企業間で協力し荷物を共同配送
  • 荷待ち・荷役時間の削減

それでは1つずつ解説していきます。

モーダルシフトの導入

2024年以降も効率よく長距離輸送を行うためにもモーダルシフトの導入を検討しましょう。

2024年問題で長距離輸送に影響が出てしまうのは、国内輸送の大半をトラック輸送に頼っているからです。

長距離輸送をトラック輸送だけに頼らず、鉄道輸送や船舶輸送も利用するモーダルシフトを導入することで、トラックによる輸送距離の削減ができます。

その他にもモーダルシフトを導入することで次のようなメリットがあります。

  • 少ない人員で一度に大量の貨物を輸送できる
  • 環境への負荷が少ない
  • 渋滞など交通状況に左右されない
  • 距離が長くなればなるほどコストが安くなる

モーダルシフトは、トラック輸送よりも輸送時間が延びたり、荷物の積み替えが発生したりするなどまだ課題はあります。

しかし世界では、スイスがモーダルシフト導入を進め、2021年に鉄道輸送を74%まで引き上げたなど世界でも注目されている取り組みです。

日本でも国土交通省がモーダルシフトを推進事業として取り組みの強化を掲げているので、今後は物流業界でモーダルシフトが進んでいくことが予想されます。

複数人のドライバーで中継輸送を実施

2024年問題以降も効率よく長距離配送を行うため、複数人のドライバーで中継輸送を実施しましょう。

2024年問題でトラックドライバーが単独で長距離輸送を遂行するのが難しくなるためです。

中継輸送の方法は次の3つです。

方式名中継方法特徴
トレーラー・トラクター方式トラクターを入れ替えて貨物の中継を行うけん引免許が必要
荷物の積み替え不要なので中継時間が短時間で済む
貨物積み替え方式中継地点で荷物を積みかえるトラックの乗り換えが不要
積み替え時間が長くなる
積み替え時の荷物破損リスクあり
ドライバー交代方式中継地点でドライバーを交替荷物の積み替えやトラクターの入れ替え不要
ドライバー同士のスケジュール調整や連携が必要

中継輸送は、ドライバーの負担を減らせるメリットはありますが、1人当たりの走行距離が少なくなるのは否めず、ドライバーの収入は減少する恐れがあります。

また中継輸送をするには、トラックを確保したり中継地を決めたりするなどの初期投資や事前調整が必要なため、事業者の負担が大きくなることが予想されるでしょう。

企業間で協力し荷物を共同配送

2024年問題以降も効率よく長距離配送を行うためには、企業間で荷物を共同配送することを検討しましょう。

これまで3つの企業が同じ目的地に貨物を配送する場合、それぞれドライバーとトラックを用意する必要がありました。

共同配送の場合、複数の企業が同じトラックを利用し、目的地へ貨物を輸送できるので、ドライバーと車両の台数を減らすことができます。

一方で、複数の企業が同じトラックを利用して貨物を配送するため、貨物の管理が難しくなる恐れがあります。

また貨物のサイズによっては大きすぎて共同配送できなかったり、食品を配送する場合は温度管理が疎かにならないよう気を付けたりと注意しなければなりません。

荷待ち・荷役時間の削減

2024年問題以降も効率よく長距離配送を行うためには、荷待ち・荷役時間を削減する必要があります。

荷待ち・荷役時間とは、荷主や物流施設での荷物の積み下ろしのためにドライバーが待機する時間のことです。

国土交通省が公開している「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」によると、トラックドライバーの平均荷待ち・荷役時間は、1時間34分にもなります。

荷待ち・荷役時間は以前から問題になっており、ドライバーの労働環境悪化の一因にもなっていました。

ドライバーの労働時間に規制が入ることから、今後は荷主と事業者が協力して荷待ち・荷役時間の短縮に取り組まないと、これまでと同じ輸送はできなくなることが予想されます。

荷待ち・荷役時間の短縮するための対策は次の通りです。

  • 手荷役からパレット荷役
  • 荷役を効率化するためのシステム導入
  • マテリアルハンドの活用による庫内作業の短縮化

これらの対策を講じないと、2030年には約3割の荷物が配送できなくなると言われています。

2024年問題以降の長距離輸送でお悩みなら日新運輸工業へご相談ください

2024年の働き方改革関連法の施行でドライバーの時間外労働の上限が厳しく規制されることから、ドライバーが単独で長距離輸送を完遂するのが難しくなります。

ドライバーの労働時間を厳守したまま、今まで通りの長距離輸送を実施するには、共同配送やモーダルシフト導入などを取り入れる必要があるでしょう。

しかしながら、トラック輸送を担う運送会社の約9割は中小企業なので、通常業務を行いながら、これらの取り組みを実施するのは困難です。

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まとめ

長距離輸送に適した方法には、鉄道・船舶・トラックの3つがありますが、日本では貨物の長距離輸送の大半をトラック輸送が担っています。

トラック輸送は荷主から納品先まで一貫して輸送することができ、荷役作業を最小限に抑えることが可能なためです。

また交通渋滞や天気を踏まえて、自由に経路を選択できるため、効率よく貨物を配送できます。

しかし、2024年4月にドライバーの年間時間外労働に制限がかけられたことから、ドライバーが一貫して長距離輸送を実施することが難しくなっています。

2024年以降も効率よく荷物を配送するには、次の対策が有効です。

  • モーダルシフトの導入
  • 複数人のドライバーで中継輸送を実施
  • 企業間で協力し荷物を共同配送
  • 荷待ち・荷役時間の削減

しかし、通常業務をしながら、自社でこれらの対策をすぐに実施するのは難しいでしょう。

専門業者にアドバイスをもらいながら、2024年問題への対策を検討していくのがおすすめです。