2024年4月から物流業界にも働き方改革法案が適用され、トラックドライバーの年間時間外労働に制限がかかりました。
今後は、労働時間の短縮によりトラックの1日の走行距離が短くなることから、トラック輸送での長距離輸送が難しくなる恐れがあります。
2024年4月以降も、今まで通り長距離輸送事業を継続したいなら、トラック輸送ではなく鉄道輸送を含め他の輸送方法を検討すべきです。
この記事では、現在日本の貨物輸送を担っているトラック輸送と、ひと昔前まで国内貨物輸送の大半を担っていた鉄道輸送をさまざまな側面から比較しました。
貨物の量や種類、配送状況によって鉄道輸送とトラック輸送を使い分ければ、2024年以降も今まで通りの貨物輸送ができるでしょう。
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鉄道輸送とトラック輸送を徹底比較
鉄道輸送とトラック輸送はどちらもメリット・デメリットがあり、貨物の種類や輸送距離によって適した輸送方法は異なります。
以下は鉄道輸送とトラック輸送をさまざまな項目で比較しまとめた表です。
鉄道輸送 | トラック輸送 | |
安定・安全性 | 高い | 一般車両との事故リスクあり |
貨物の破損リスク | トラック輸送よりも高い | 低い |
コストパフォーマンス | 長距離・大量輸送だとコスパがよい | 短距離・貨物量が少量だとコスパがよい |
緊急時の対応 | 臨機応変の対応が難しい | 緊急時の対応も可能 |
リードタイム | トラックより長い | 鉄道よりも短い |
輸送に適した貨物 | 目的地が遠方にある貨物 コンテナ貨物では大量の生活必需品 車扱貨物では石油やガソリン・灯油などの燃料 | 少量の生活必需品 |
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
安全性・安定性
輸送時の安全性・安定性は鉄道輸送に軍配が上がります。
鉄道輸送の貨物駅は全国に約150箇所設置されており、毎日約500本もの貨物列車がスケジュール通りに運行しているためです。
自然災害などで一時的に運休・遅延することはありますが、渋滞などに巻き込まれることはないのが大きなメリットと言えるでしょう。
また令和4年に発生した事故件数を比べると、鉄道輸送の事故件数が583件に対し、トラック輸送の事故件数は9,371件となっています。
トラック輸送の事故件数は鉄道輸送の16倍にもなるのです。
このことから、鉄道輸送は高い安全性と安定性を持っていることがわかります。
貨物の破損リスク
貨物の破損リスクはトラック輸送に軍配が上がります。
鉄道輸送はトラック輸送のようなドアツードア輸送ができないため、貨物の積み荷作業が発生してしまうためです。
鉄道輸送による貨物の破損リスクは、梱包技術の向上や運転時の振動を最小限に抑えるためのシステム開発など、企業努力によって以前より減少しています。
しかし、目的地から納品先まで貨物入れ替えがないトラック輸送の方が貨物破損リスクが少ないと言えるでしょう。
コストパフォーマンス
コストパフォーマンスを比較すると、近距離の場合はトラック輸送、長距離の場合は鉄道輸送に軍配が上がります。
鉄道輸送は長距離輸送ではトラック輸送よりも割安で大量の貨物を目的地へ輸送可能です。
しかし、中・近距離の輸送では逆にコストがかかる恐れがあります。
一方、トラック輸送は長距離になると割高になるため、中・近距離輸送での輸送がおすすめです。
トラックに積載する貨物サイズや重量が大きい場合、1台のトラックに収められないこともあるため、コストが割高になる可能性があります。
緊急時の対応
緊急時の対応は、トラック輸送に軍配が上がります。
トラック輸送は天候や渋滞状況に応じて、ドライバーが自由に出発のタイミングや経路を変更することが可能なためです。
そのため、もし急ぎ貨物を追加したとしても、経路や休憩時間を調整することで、予定通りの配送日時で配送ができます。
一方、鉄道輸送はあらかじめ決められたスケジュールに従って運行されるため、出発時間を早くしたり遅くしたりすることができません。
もし、急ぎで貨物を追加しようとしても、出発時間厳守なため対応できないケースが多いでしょう。
環境への負担
環境への負担が少ない輸送方法は、鉄道輸送に軍配が上がります。
鉄道輸送は、国内貨物輸送の輸送手段の中で最もCO2排出量が少ないためです。
以下は国土交通省が公表した2022年度の運輸部門におけるCO2排出量の集計データの1つです。
各輸送方法で排出されるCO2排出量を、輸送量(トンキロ:輸送した貨物の重量に輸送した距離を乗じたもの)で割り、単位輸送量あたりのCO2排出量を試算したときの図になります。
単位輸送量当たりの二酸化炭素の排出量もトラック輸送が圧倒的に多く、鉄道が20に対し、トラック輸送は208と10倍以上のCO2排出量となっています。
リードタイム
リードタイムが短い輸送方法は、トラック輸送に軍配が上がります。
トラック輸送は鉄道輸送と異なり、荷主から貨物を受取り目的地まで貨物の積み替えなく、目的地までダイレクトに輸送する「ドアツードア輸送」が可能なためです。
鉄道輸送の場合、トラックで貨物を貨物取扱駅へ配送したり、最寄り駅から目的地まで配送するために貨物を詰め替えたりするなどの作業が発生してしまいます。
そのため、鉄道輸送はトラック輸送に比べてリードタイムが長くなり配送日数が余分にかかってしまうのです。
輸送に適した貨物
鉄道輸送とトラック輸送に適した貨物はそれぞれ異なります。
ここからは、それぞれの輸送手段に適した貨物を見ていきましょう。
鉄道輸送で運ぶのに適したもの
コンテナ輸送で運ばれるもの | 車扱輸送で運ばれるもの |
・農産物・青果物 ・化学工業品 ・化学薬品 ・紙・パルプ ・自動車部品 | ・石油 ・セメント・石灰石 ・車両 |
鉄道輸送の体系はコンテナ輸送と車扱(しゃあつかい)輸送の2つに大別されます。
コンテナ輸送では私たちの生活必需品(食料や医薬品、日用品など)を輸送し、車扱では石油やガソリンが輸送されます。
コンテナ輸送は、その名の通り貨物を「コンテナ」という容器に入れて運ぶ輸送方法です。
トラックと鉄道が共同し、発荷主から納品先までコンテナ内の貨物を積み替えることなく、一貫して輸送します。
近年ではコンテナの種類も豊富で、冷蔵用・冷凍用コンテナや湿度を防ぐために通風機能が付いたコンテナなど利用されています。
一方、車扱輸送はタンク車など貨車を一両単位で貸し切って利用する輸送方法です。
かつては国内貨物輸送で最も利用されていた輸送方法で、石炭・石灰石・セメント・石油などが輸送されていました。
現在では、車扱いの輸送量は大幅に減少しており、車扱輸送量の約70%を石油が占めている状況です。
トラック輸送で運ぶのに適したもの
トラック輸送も鉄道輸送と同じく、私たちの生活必需品の輸送に適しています。
令和2年度のトラック輸送の品目と構成比は次の通りです。
品目 | 詳細 |
消費関連貨物 | 農水産物・食料工業品・日用品など |
建築関連貨物 | 木材・石材・砂利など |
生産関連貨物 | 金属・石油製品・機械など |
営業用トラックと自家用トラックでは輸送品目の構成比が大きく異なります。
いずれの品目も鉄道輸送よりもリードタイムが短くドアツードア輸送が可能なので、生鮮食品も問題なく納品することができるでしょう。
また、鉄道輸送の貨物取扱駅から納品先への輸送をトラックが担うこともあります。
トラック輸送から鉄道輸送への転換で2024年問題は解決できる?
2024年4月より物流業界にも働き方改革関連法が適用されるようになり、トラックドライバーの労働時間に厳しい制限が設けられるようになりました。
このことにより、今後はトラックでの長距離輸送が難しくなり、各企業が鉄道輸送を含む他の輸送手段への転換を検討しています。
トラック輸送に影響を及ぼす2024年問題
2024年4月に適用された働き方改革関連法により、トラックドライバーの年間の時間外労働の上限が960時間に制限されるようになります。
2024年問題に対して何も対策せず、今後も国内輸送をトラック輸送に頼ると、2030年には輸送能力の34.1%が不足してしまうことが予想されています。
輸送能力が不足すると次のような影響が生じます。
《トラック会社》
- 長距離輸送ができなくなる
- ドライバーの人員不足が深刻化する
- 配送にかかる時間が長くなる
- 時間外労働が制限されるためドライバーの給料が減る
《荷主》
- 必要なときに必要な物資が届かない
- 輸送を依頼しても断られるケースが増える
- 荷主の輸送コストが増加する
《消費者》
- 当日配達・翌日配達のサービスが受けられない
- 鮮魚や新鮮な野菜など生鮮食品が店頭に並ばなくなる
トラックドライバーの年間の時間外労働時間が960時間に制限されると、1日あたりの走行距離は改正前と比べて約50キロ少なくなることが予想されます。
その結果、長距離輸送のリードタイムが延びる可能性があるでしょう。
また労働時間短縮で影響が出るのは、長距離のトラック輸送だけではありません。
今回、法律により制限されるのは労働時間のため、渋滞や信号待ちなどの道路状況や積み荷作業時間を加味すると、中・短距離のトラック輸送にも影響が出ることが予想されます。
鉄道輸送へモーダルシフト移行によるメリット
2024年問題対策のため、近年ではトラック輸送から鉄道輸送へ転換を検討している企業が増えています。
トラック輸送から鉄道輸送へ転換すると次のようなメリットがあります。
- 長距離輸送・大量貨物輸送のコスト削減
- 二酸化炭素排出量削減
- スケジュール通りの安定的な配送
- ドライバー不足解消
鉄道輸送は、輸送する貨物量に対して最小限の人員で輸送が可能です。
鉄道輸送の最大積載量は約650トンですが、輸送するのに必要な運転手は1人だけです。
大型トラックの最大積載量は10トンなので、同じ貨物量を輸送するとなるとトラック65台、65人の人員が必要になります。
また、今後トラックで長距離輸送ができないとなると途中で人員を交替せざるを得なくなるケースもあるでしょう。
そうなるとより多くのトラックドライバーが必要となります。
このことから、トラック輸送から鉄道輸送に切り替えることで、ドライバー不足の解消が期待できるでしょう。
トラック輸送から鉄道輸送への転換で生じる課題
トラック輸送から鉄道輸送へ切り替えることでさまざまなメリットが得られますが、国内貨物輸送の鉄道輸送のシェアはわずか5%しかありません。
その理由は次の通りです。
- 大雨や台風、地震など自然災害で輸送がストップする
- 鉄道輸送の代替輸送手段の確保ができていない
- 貨物の荷積み作業があるためトラック輸送に比べるとリードタイムが長くなる
- 電気料金の値上げの影響で鉄道輸送が赤字経営
上記以外にも、「料金体系や列車ダイヤがわかりにくい」「鉄道輸送の仕組みが理解されていない」など、そもそも荷主が鉄道輸送について理解されていないことも課題として挙げられます。
また近年は、自然災害による輸送障害が増えているのも大きな課題です。
大雨や台風などはもちろんのこと、鹿や鳥など害獣による輸送障害も多発しています。
これらの課題を解決しなければ、鉄道輸送のシェアは今後も伸び悩むことが予想されます。
鉄道輸送やトラック輸送でお悩みなら日新運輸工業へご相談ください
2024年問題によって、トラック輸送に頼る貨物輸送を転換しようという動きが出ています。貨物輸送の選択肢の1つが鉄道輸送です。
しかしながら目的地までの距離や輸送する貨物の量、貨物の種類、サイズによってはトラック輸送のままで輸送した方がよいものもあります。
輸送する貨物によって鉄道輸送にするか、トラック輸送にするかを選択するかは、物流業界のプロの目線が必要です。
日新運輸工業は鉄道輸送・トラック輸送のどちらにも対応しているのはもちろんのこと、長年の経験や実績から輸送手段のコーディネートには自信があります。
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まとめ
かつて国内貨物輸送の大部分を担ってきた鉄道輸送と、現在国内貨物輸送の大部分を担っているトラック輸送はどちらもメリット・デメリットがあります。
2024年4月以降は、物流業界にも働き方改革関連法が適用され、ドライバーの時間外労働が厳しく制限されることから、鉄道輸送への転換を検討している物流会社も増えてくることが予想されます。
しかしながら、鉄道輸送は緊急への対応が難しい他、自然災害や害獣の発生により運休や遅延を余儀なくされることがあるため切り替えには注意が必要です。
また、鉄道輸送の仕組みが物流会社に理解されていないことも鉄道輸送のシェア率が増えない要因となっています。
自社の貨物の輸送方法をトラック輸送か鉄道輸送か迷ったときは、物流業界のプロに依頼するのがおすすめです。
プロに任せることで、貨物を最も適した方法で効率よく輸送することができるでしょう。